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まずはさとこ(Dr)が一人で登場し、音数は極端に少ないながらも大振りなグルーヴのビートを刻む。続いてステージに姿を現したまりな(G&Cho)、そして「そうね、今日は日本に原爆が落ちた日ですね。爆弾を落としにやってきました! 日本マドンナです!」とあんな(Vo&B)が歯に衣着せぬ“ラップ”の一節でステージの口火を切り、そこから一気に“幸せカップルファッキンシット”になだれ込むというオープニング。続いては、以前に対バンした人が、日本マドンナのそんな余りに率直な表現スタイルを掴まえて「親に申し訳ないと思わないの?」と語ったことに怒髪天を衝き、生み出されたというナンバー“バンドやめろ”だ。奇を衒っているわけではない。ただ伝えるべき言葉だけを伝えるから、日本マドンナの歌はこうなる。ロックと呼ばれる表現はその歴史の中で多様化を果たしてきたし、その事実を否定するつもりもないが、少なくとも本来ロックとは、こういうものだったのである。
まりなも右へ左へと大きくステップを踏みながら全身でギターを弾くような姿を見せている。“汚したい”のフィニッシュにはあんなとまりながステージ中央でキスをするという一幕もあって、あんなが「何事も反抗しようとするとエネルギーが生まれるので」と今度は日本マドンナの行動原理を丸ごと説明するようなヘヴィなナンバー“クツガエス”を披露してゆく。かつて少女たちは、そのために楽器を手に取ったと言っても過言ではないだろう。「なんかこんなに手を挙げてもらったりして、たじろいでしまいます。世の中のものは、オシャレにしたり、キレイにしたり、そういうのに疲れちゃった、って思って作った曲」とあんなが告げて“村上春樹つまらない”へ。そして最後には、あんながゆったりと、アドリブのベース弾き語りで《こんなに暑くて、息苦しくてさあ、心を曝すたびに私の心は傷ついて、それでも音楽にすがり付いて、もう離れられないって気づいて……》と歌い出し、ダイナミックにエモーションが広がってゆくさまをバンドが全身全霊を込めて描き出す“田舎に暮らしたい”がプレイされた。高い演奏技術があるわけじゃない。怒りに震えてしまって言葉もうまく出てこない。でも、だからこそ、日本マドンナのロックは最強だ。(小池宏和)