Luna Li――ドリーミーなサウンドで耳目を集めるカナダ発のSSW/マルチインストゥルメンタリスト。そのルーツと魅力をひもとく


【今月の気になるあいつ】Luna Li

カナダのトロントを拠点とするSSW/マルチインストゥルメンタリスト。17年よりLuna Li名義での活動を開始し、パンデミック中には様々な楽器を演奏する短い動画をSNSに投稿し注目を集めた。その後、22年にデビューAL『Duality』をリリース。24年には2nd・AL『When A Thought Grows Wings』をリリースし、25年4月には初の来日公演が実現。豊かな音楽的素養から紡ぎ出されるあたたかなインディポップサウンドで世界を魅了している。


現在発売中のロッキング・オン6月号では、「気になるあいつ」にてLuna Liを掲載しています。本記事の一部をご紹介。



夢と現実の狭間をたゆたうような恍惚感、浮遊感のあるメロディ。優しく寄り添う繊細なハープの音色が耳元で鳴るたびに、視界がファンタジックに彩られていく——。Luna Liの音楽を初めて聴いた人が、まず心を奪われるのはその“ドリーミーな音の質感”だ。澄んだ空気に包まれるようなサウンドスケープは、まるで夢の中にふわりと入り込むような没入感をもたらす。ギター、ベース、ドラム、ハープ、そしてバイオリンまでを自在に操る彼女の音楽には、職人的な緻密さと、少女の空想世界のような奔放さが共存しているのだ。様々な楽器を操るマルチ奏者で、上質なインディポップが支持を得てきた新時代の実力派。彼女が一体何者なのか紐解いていこう。

22年のデビュー作『Duality』、そして24年の最新作『When A〜』が批評筋から軒並み高い評価を受け、25年4月には来日公演も果たしたLuna Li。韓国系カナダ人のSSW/マルチインストゥルメンタリスト、Hannah Bussiere Kimによるこのソロプロジェクトは、ここに来てインディポップシーンに新風を吹き込む存在として注目を集めている。カナダのトロントで生まれ育った彼女は、音楽教育に情熱を注ぐ母の影響で幼少期からクラシック音楽に触れていた。母親が経営する音楽学校でピアノ、バイオリンなどを学び、さらには自らの興味でエレキギターやドラムにも挑戦するようになる。つまり、今のLuna Liの土台には、遊びと学びが一体化したような、音楽との自然な距離感がある。しかしその後、大学ではバイオリンを学ぶも「学問としての音楽がクリエイティブには感じられなかった」と中退。代わりにガレージロックバンドを組み、荒削りなギターサウンドを追求した時期もあった。その片鱗、つまり時折顔を覗かせる荒いギターは、ソロになって以降の近作でもほのかに感じられるはずだ。

さて、彼女がLuna Liという名義でソロ活動を始めたのは17年。いくつかのシングルをリリースしながら静かにキャリアを積み重ねていた彼女に、大きな転機が訪れたのは20年のことだった。パンデミックのさなか、自宅でハープやギターといった様々な楽器を演奏する様子を1分程度の動画にまとめSNSに投稿すると、瞬く間にバズが発生。「あなたの近所の月の精霊」と形容されたその動画は、多くの人々の心を和ませ魅了した。そのアプローチをヒントにした作品は、『Jams EP』(21年)といった形でまとめられている。


続きは、『ロッキング・オン』6月号で! ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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