ロイエル・マデルとオーティス・パヴロヴィッチの2人でロイエル・オーティス。シンプル極まりないバンド名を冠したシドニー出身の2人組は昨年1st AL『プラッツ・アンド・ペイン』を発表し、オーストラリアのチャートで10位にランクイン。ジャングリーなギターポップとインダストリアルなサウンドを併せ持つ彼らは、今年のフジロックで初めて日本のオーディエンスの前に姿を現す。キャッチーなパワーとやけっぱちなオーラが共存するその表現は、どこからきて、どこへ向かうのか。素直なロイエルと、少し寡黙なオーティス。2人の交わす言葉は率直かつユーモラスで、愛さずにはいられない魅力に満ちていた。ロイエル・オーティス、是非チェックしてみてください。(インタビュアー:伏見瞬)
●『プラッツ・アンド・ペイン』は、耳に残るメロディと同時に、硬質でインダストリアルなドラムの音が印象的でした。加えてベースラインの美しさも特徴的で、カンやジョイ・ディヴィジョン、DIIVを思い出しました。こうした音作りは意図していましたか?
ロイエル「うわ、それめっちゃ嬉しいな。今挙げてくれたバンド全部好きだし、どの楽器からもメロディが聴こえるようにしたいっていうのはずっと意識していることなんだ。インダストリアルなサウンドは、プロデューサーのダン・キャリーの影響がデカい。あの人、マジでビートに関してはマッドサイエンティストだから(笑)」
オーティス「俺もジョイ・ディヴィジョンはずっと聴いてたし、アルバム作ってたときにはちょうどニュー・オーダーにハマってたんだ」
●今名前も出ましたが、プロデューサーのダン・キャリーとの仕事はいかがでしたか。
ロイエル「もともとダン・キャリーの手掛けた作品のファンだったんだ。フォンテインズD.C.やウェット・レッグの作品が大好きだったし、カイリー・ミノーグの“スロウ”も好きだった。最初にダンと会ったときにはこっちもビビってたんだけど、強面をしためっちゃチャーミングな人だった(笑)。共通の友人を通じて今回の仕事が実現したんだけど、彼がやりたくない相手とは絶対に仕事をしない主義なのは知っていた。うちのバンドに興味を持って受け入れてくれて、ただただ嬉しかったよ」
●ダンとはどのようなディスカッションがありましたか?
オーティス「いくつか違ったテイストの曲を持っていって、最初の週はそれをひたすら1曲ずつ精査した。そこから、MPC(サンプラー)を使いながらその場であれこれ音をいじったりして曲を拡大して、全体像を描いていった感じ。実際、MPCで作った音もいくつかの曲で採用されてるよ」
ロイエル「今回みたいな作り方は自分たちにとっても初めての経験だったけど、何かを押しつけられるということは一切なく、むしろこっちがどういう方向を目指してるのかに、前のめりで興味を示してくれた。こっちもダンの作品をすごくリスペクトしてるし、この人なら信用できるっていう信頼関係があったから、ダンのテイストが出ても安心して受け入れることができた」
●今のスタイルには、どのような経緯で至ったのでしょうか。
ロイエル「これは完全に自然の流れだね。気づいたらこうなってた」
オーティス「ほんとそれ。全然違う2人が出会って全く別の要素が融合した。それが今のスタイルに繋がったんだ」
●『プラッツ・アンド・ペイン』に収録されている“ヴェルヴェット”や“モリー”には、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響を感じました。今までのあなたたちにはなかったサウンドだなと。
ロイエル「まさにご指摘の通り。“モリー”はプロデューサーのジェームス・フォードが関わってるんだけど、彼が持ってた奇妙な楽器を使ってストリングスみたいな音を出したんだ。あれはヴェルヴェッツの“毛皮のヴィーナス”からの影響丸出しだし、“ヴェルヴェット”も“僕は待ち人”方式の、単調なピアノパターンが基盤になってる曲だよね」
●あなたたちのメロディアスな要素や硬質なサウンドは、オーストラリア出身のRat ColumnsやDMA'Sを思わせます。オーストラリアのバンドと、自分たちの繋がりを感じますか?
ロイエル「DMA'Sとはすごく仲良くさせてもらってるよ。自分が音楽を始めたばかりの頃、同じライブ会場や地元のバーを回っていた縁で自然に仲良くなっていったんだ。何年か前にブリスベンで彼らをサポートしたことがあってさ。今思い返しても最高の思い出。本当に大好きで尊敬してるバンドだよ」
●シドニーに限定せずに自分たちの世代で共感してるバンドは?
オーティス「それを言うなら、フォンテインズD.C.とMk.gee」
ロイエル「フォンテインズD.C.はめっちゃいいよね!」
オーティス「Mk.geeに関しては、最近の作品がぶっちぎりに素晴らしい」
ロイエル「あと、リル・ヨッティーが超好きなんだよなあ。マジでめちゃくちゃクール。正直な自分をそのままさらしてる感じが潔くていい」