とてつもない規模、規格外の舞台セット・演出、そして何よりMrs. GREEN APPLEの愛が詰まったスペシャルなライブだった。
まずそのセットのスケール感に度肝を抜かれる。
フィヨルドの涼しげな岩山がステージに設えられ、実際に水が流れ落ちる滝まである。やがて美しいストリングスのサウンドが響き始め、青い海が穏やかに波立つ映像が映し出されると、いよいよライブの始まり。映像はいつしか氷河の中に3つのジュエルの原石を映し出す。そして島々の間を渡る帆船。その船が辿り着いたのは緑や花が美しく広がる肥沃な大地。そこにミセスのこれまでの歩みをイメージさせる様々なモチーフが幻想的に浮遊する。
そんなファンタジックな映像に見惚れるうちに、メンバーはいつの間にかステージイン。大森元貴(Vo・G)の歌い出しと同時にカラフルな噴煙が打ち放たれて始まったのは“コロンブス”だ。まるでここから大航海が始まるような幕開け。高らかな歌声が埠頭に響き渡る。続けざまに放たれたのは“ビターバカンス”。5万人が音に合わせて跳ねる光景は圧巻。藤澤涼架(Key)も笑顔で体を揺らす。大森のラフに音楽を楽しむような歌唱も気持ちいい。軽妙に「ギター」と若井滉斗(G)にソロを促せば、若井はおなじみのダックウォークで決める。ウォーターキャノンも、カラースモークも序盤からクライマックスかというほどに惜しみなく放出され、祝祭感はすでに最高潮。“フロリジナル”では3人がふざけ合うように音の応酬を楽しんだり、メンバーたちも心底このライブを楽しんでいるのがわかる。(以下、本誌記事に続く)
文=杉浦美恵 撮影=田中聖太郎写真事務所
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年10月号より抜粋)
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