back numberは未来のバンドである。
今まさに大活躍しているバンドに対しておかしな言い方をしていると思われるかもしれないが、そう思うのである。理由は、最近リリースされた新曲たちを聴いたからだ。そのうち1曲は6月20日にリリースされた“ある未来より愛を込めて”。この曲で歌われているのは、タイトルが示すように「未来から現在に向けて届けられたメッセージ」である。《まだ君の知らない未来より/愛を込めて》と歌うこの曲で、back numberは彼らが立つ地点を、あるいは彼ら自身を「未来」と定め、その場所から、この時代を生きる若者たちに向けて「今」という刹那に宿る無限の可能性を伝えようとする。「君が昨日の君を振り返って見出すことのできない希望なら、俺たちが未来から、その希望を見出してやる」と言わんばかりに。この鮮烈な楽曲を初めて聴いた時の感動は大きかった。sugarbeansがプロデュースを手掛けた流麗なストリングスと推進力のあるダンスビートが重なるサウンドもまた、未来から吹き抜ける風のように鮮やかだ。
もう1曲は、7月31日にリリースされた“幕が上がる”。劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』の主題歌であり、小林武史がプロデュースを手掛けた美しく繊細なバラードであるこの曲でも、back numberは「未来から」流れる時間をキャッチし、その流れに乗せて、私たちが私たち自身の人生を懸命に生き抜くためのメッセージを奏でている。その証拠に、この“幕が上がる”の歌詞に描写されているのは、タイトルとは裏腹に「幕引き」の場面の数々である。(以下、本誌記事に続く)
文=天野史彬
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年10月号より抜粋)
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