2024年でデビュー10年の節目を迎え、この10月に無事10周年イヤーを駆け抜けたWANIMA。今年は3月に配信リリースした“存在”を皮切りに、夏にはEP『Off-Leash』、そして9月には映画『俺ではない炎上』の主題歌として書き下ろされた“🔥おっかない🔥”と、精力的に新曲も投下してきたが、その曲たちを聴けば、一昨年に事務所から独立し新体制のスタートを切った彼らが今、新たなモードに突入していることがわかるはずだ。KENTA(Vo・B)の祖母との記憶をまっすぐに歌った“存在”、新たな協力者とともに新鮮なサウンドを作り上げた“トビウオ”、渋谷の風景に自身の過去と今の若い世代へのメッセージを重ねた“MIYASHITA”、そして映画のテーマをトリガーに思いの丈をぶちまけた“🔥おっかない🔥”。今まで以上に制限なしに「やりたいこと」に向かって音を鳴らしているWANIMAの今の姿について、語ってもらった。
なお、この記事の完全版は10月30日発売の「ROCKIN’ON JAPAN2025年12月号」に掲載します。そちらもぜひチェックしてください。
インタビュー=小川智宏 撮影=YOSHIHITO KOBA
──今年はリリースが続いていて。去年と比べると、ペースが一気に上がりましたね。本当に自由になってきたかもしれないですね。どう歌わないといけないとかもなくなったし、本当に自分から湧き出てくるものだったり、周りから教えてもらったことを融合させて、音に変えていけたらなって(KENTA)
KENTA そうですね。なんで新曲いっぱい出してるのかっていったら、簡単に説明するとデビュー10周年だからなんですけど。
──しかもそれぞれ違うカラーの曲をどんどん出してきていて。10周年を迎えて、ここに来てより自由になってるというか。曲にも以前とは違う自由なモードが出てきていると思う。
KENTA 8月に出したEPのタイトルの『Off-Leash』っていうのは、「リードを外す」という意味で。ジャケットもそうなってるので見て感じてほしいんですけど、そう考えると、自由になってるのかな。これを続けていったら絶対に間違いないって気がしてます。まだ本当に全然やから、チームが固まるまでに時間はかかるし、いろいろ苦しい部分はあるけど。昔から「仕事は仲間と一緒にやるな」って言われてて、「そんなことないやん」って前は思ってたけど、先人たちがおっしゃってたことがだんだんわかってきた(笑)。でも、それを諦めたくないなって思ってる。
──今年出してきた曲の中には、たとえば“存在”や“MIYASHITA”みたいな、KENTAくんの個人的な思いや記憶が率直に綴られた曲もあって。この率直さもすごくいいなと思うんです。
KENTA そういう意味では、本当に自由になってきたかもしれないですね。どう歌わないといけないとかもなくなったし、本当に自分から湧き出てくるものだったり、周りから教えてもらったことを融合させて、音に変えていけたらなって思ってます。
──曲はバンバン出てきてるの?
KENTA 出てきてないですよ! でも曲の出てき方は自分でちょっとずつわかってきた。昔は3人でドーンって音出して作ってて──信頼してるふたりだけど、やっぱり彼らの目も気になるんですよ。2、3時間音が出んかったらどうしよう、メロディが出んかったらどうしようって、気も張って、キーも上がって、空気も悪くなって……みたいな感じだったんですけど、最近は『それじゃ出んよな』って思うようになって。それで、FUJIくんを抜いて、俺とKO-SHINで──KO-SHINはね、別に何十時間ギター弾かせてもいいんで(笑)。
FUJI(Dr・Cho) (笑)。
KENTA それでああして、こうしてってやって、「忘れんように録音しといて」とか言いながら。KO-SHINを前にして僕はひとりで何十時間も喋ってるだけ。だから、KO-SHINみたいな人が増えたら、たぶん無限に曲作れる(笑)。でもKO-SHINはギターしかできないから、そういう相手を増やしていけたら無敵です。
──やっぱりKO-SHINくんみたいな、キャッチボールというか壁打ちができる存在がいてくれるというのは──。
KENTA いやいや、もう宇宙に向かってボール投げるだけですよ。KO-SHINは宇宙人やから(笑)。でも、俺はバーッて自由にとっちらかるけど、KO-SHINはずっとひとつのことをやれるんですよ。筋トレもそうやし。そこはすごく感謝してます。
──本当に忍耐というかね。
KENTA そう、ほんと忍耐。
──だそうです、KO-SHINさん。
KO-SHIN(G・Cho) (笑って頷く)。
──ひと言くらい喋ってくれねえかな(笑)。
FUJI 相槌もなし(笑)。
KENTA 空洞なんですよ。めちゃくちゃ壮大な空洞。もうね、先が見えんぐらいの空洞でした。
──(笑)。『Off-Leash』の3曲はどれも全然違う色を持った曲になってますよね。今までWANIMAがやってきたことも、やってきてなかったことも入った、めちゃくちゃ面白いEPだなって。キャッチされてるのは喜怒哀楽の「喜」と「楽」の部分ですけど、WANIMAには他の部分もちゃんとある(FUJI)
FUJI うん。
KENTA 『Off-Leash』は夏の1枚として、夏の終わりに聴いてそれぞれの夏を思い出せるようなEPにしたかったんですよ。やけん、1曲目は2025年のWANIMAのエロ曲っていうか、ちょっと浮かれた夏を閉じ込めたような“トビウオ”から始まって。“Best you”は昔からあった曲なんですよ。俺、昔からある曲を出すのって嫌なんですけど、“Best you”は、何かのタイアップが来た時に出したいねってずっと取っておいた曲だったんです。でもタイアップを待つんじゃなくて、自分たちでライブの代表曲にしようよって言って、EPに入れることにして。本当はめちゃくちゃいい別の新曲もあったんですよ。俺はそれを出したかったんですけど、今回は“Best you”を入れた。そっちの新曲は来年出そうかなって思ってるんですけど、その時になったらまた気持ちは変わってるから、たぶんお蔵入りする(笑)。すごい歌なんですよ。
──もったいない!
KENTA もったいないけどね。もうちょっとアレンジして、自分で納得できれば出すかもだけど。
──でも結果、“トビウオ”と“MIYASHITA”があって、その真ん中に“Best you”があるというのはよかったと思いますけどね。あの曲を聴くとちょっと安心するんだよ。
FUJI うん。
──WANIMAの王道というかさ。
KENTA ああ、そうね。
──逆にいえば、真ん中に王道があるから、他の曲も引き立つというところもあって。“MIYASHITA”、めちゃくちゃいい曲ですねえ。
KENTA 大好きです。これは渋谷のMIYASHITA PARK(宮下公園)のことなんですけど、俺、渋谷でずっとバイトしてたから、あそこが今みたいにきれいになる前、駐輪場にホームレスのおっちゃんたちが住んでた時代から、いつも行ってたんです。あそこでホームレスのおっちゃんたちの集会とかがあって、俺、その集会とか出てたの。あと、神南で居酒屋のキャッチしてたんですけど、タワレコによくバンドマンとかアーティストが挨拶回りに来るじゃないですか。それを横目に、悔しい、絶対見返しちゃるって思っていたこととか。渋谷で僕は青春を過ごしたから、その頃に宮下公園で語ったこととか──久々に行ってみたら、もうあそこは今、若者の聖地なんですよ。
──あの屋上のところね。
FUJI 昔と全然違う。
KENTA TikTok撮ったりナンパしたり、女の子は恋愛話してたり、本当に若者の象徴みたい感じで、すごいなと思って。俺はあの時の気持ちを歌うけど、この子たちは俺のこの曲を聴いたら違うふうに受け取ってくれるのかな、とか思いながら。それで、曲にも象徴となる場所が欲しかったから、“MIYASHITA”って付けました。でも「宮下さんに向けて作った曲ですか」とか聞かれたりするんですよ。「ちょっと待ってくれ」みたいな(笑)。
──まあ、《波の音に包まれた町》っていう、これはたぶん故郷の天草の風景なんだと思うけど、そこから始まるから、パッと聴いて渋谷のことだとは思わないかもしれないですね。でも、この“MIYASHITA”もそうだし“Best you”もそうだけど、最近のWANIMAは、暗い部分もちゃんと見つめたうえで、それでも希望というか光というか、そっちの方向を向けるようになった感じがする。
KENTA あ、本当ですか? こないだ新宿2丁目の店の方に言われたのが、「店でWANIMAが流れると“あの人たち眩しくて見てられない”ってお客さんが言うてたけど、あんた、実際会うと相当闇抱えてるな」って。まあそうよなっていう。でも、少しずつ……もともとすげえマイナス思考でネガティブやから、そういう人間が作る、明るい歌っていうか。そうはなれないけど、希望を信じて歌ってますね。
──そういうものになってきているよね。
KENTA 今は、「眩しい」って言われてもそれを客観的に見れる部分もあったりするし。でもあの時のまま止まってる人たちに「WANIMAです」って言ってもたぶん玄関も開けてくれんやろうな。本当にヘコんでギリギリのやつらに届けたい歌なんやけど……難しいっすよね。まあ、なんて言えばいいんだろう、「俺はおまえらより暗いよ」って言いたいです。
──もっといえば、暗い/明るいって簡単に分けちゃう必要もなくて。その両面を持った人間性を、1曲の中で表現できるようになってきたんだなあっていうのは感じますよ。“存在”を歌っているのもWANIMAだし、“トビウオ”を歌っているのも同じWANIMAだし。
FUJI キャッチされてるのは喜怒哀楽の「喜」と「楽」の部分ですけど、WANIMAには他の部分もちゃんとあるので。
KENTA その2丁目の店で「闇があるね」って言われたけど、その人も、俺が最近の歌をカラオケで歌ったら『勘違いしてたわ』って言ってたよ。
FUJI カラオケで歌ったんだ(笑)。