初日は天候に恵まれていたものの、2日目は強い雨が降りしきる中で開演時間を迎えた「京都大作戦2019 〜倍返しです!喰らいな祭〜」。タフな環境ではあるけれど、それを乗り越えて喜びを見つけてゆくところに、「大作戦」の「大作戦」たる所以がある。2018年2日目中止のリベンジを果たすべく、ズラリとラインナップされた出演アクトたちの熱演があった。大規模ステージ=源氏ノ舞台の模様を中心に、振り返ってみたい。
「めちゃめちゃ雨かもしれんけど、うちらの渾身の晴れ舞台、はじめるでーっっ!!」と景気の良い第一声を浴びせかける、Dizzy Sunfistのあやぺた(Vo・G)。今年5月にはおめでたい報告があり、それに伴ってライブでは椅子に腰掛けてプレイすることもアナウンスされていたわけだが、実際には立ちっぱなしの前のめりな歌と演奏でグイグイリードしてゆく。幻惑的なギタープレイが持ち込まれる“STRONGER”にしても、絶大な信頼感を受け止めさせるバンドサウンドが鳴り響いていた。「源氏ノ舞台と牛若ノ舞台があって、本当に良かった!」という言葉は、メキメキ成長するバンドの姿を映し出すようだ。歌声を攫う終盤の“The Dream Is Not Dead”が美しい。
結成20周年、「京都大作戦」を支え続けてきたバンドのひとつであるdustboxは、ダーティーなムードを纏う新曲“Farley”が中盤の沸点を担っていて素晴らしい。「演出とかに金掛けられないけど、俺たち曲書けるじゃん(JOJI/B・Vo)」、「京都大作戦のために作った曲だったんだけど、出来上がったら甘酸っぱいラブソングになってました(SUGA/Vo・G)」と語られた“Summer Again”は、ドラマティックに練り上げられた構成が見事だ。2017年の「大作戦」では、10-FEETの面々が椅子に座らされ“ヒトリセカイ”のカバーを聴かされる、というくだりがあったけれども、今回は10-FEETが自発的にパイプ椅子を持ち込んで座ったまま盛り上がっていた。
「今週は、いろいろお騒がせしました。できれば、ライブの方もお騒がせしたいと思ってるんで、よろしくお願いします。いい具合に濡れてると思うんで、セックスの歌から始めます」と、自らの週刊誌ネタで湧かせるクリープハイプの尾崎世界観(Vo・G)。“HE IS MINE”に始まり、心地よくダンサブルな曲調が続くセットリストは、もしかすると雨で体の冷えたオーディエンスに向けた配慮だったのではないだろうか。「綺麗に咲くのは10-FEETに任せて、こっちは綺麗に散りたいと思います」と繰り出された最終ナンバーは“栞”。ひと癖もふた癖もあるロックナンバーたちが、鮮やかに初出演の大作戦を彩る、そんな名演であった。
ふいに雨が上がり、絶好のタイミングで登場したのはWANIMAの3人である。このタイミングで“雨あがり”は披露されなかったけれども、猥雑なダンスチューン“いいから”でオーディエンスを焚きつけ、10-FEETの面々も飛び入りする“VIBES BY VIBES”カバーで「この曲を10-FEET兄さんにあげたいと思います」と冗談めかしたりしている。WANIMAにとっては、こんなふうに今でも弟分キャラを発揮できる場所は嬉しいものなのではないだろうか。妖艶なトロピカルグルーヴで駆け抜ける“渚の泡沫”があれば、「ふとか声で歌うよー!!」と呼びかける“ともに”や“シグナル”もある。グッドメロディの掌握力によって、信頼感を勝ち取るステージであった。
精微にして生々しい躍動感を兼ね備えたアンサンブルを立ち上らせ、広大な源氏ノ舞台エリアをものともしない音のスケール感を発揮していったACIDMAN。鋭いコンビネーションを轟かせる“波、白く”も、優しく歌いだされる“リピート”も、一期一会の有機的なライブ体験を約束している。佐藤雅俊(B)も拳を振りかざしてヒートアップする“ある証明”でフィニッシュかと思いきや、大木伸夫(Vo・G)はACIDMAN主催フェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」で10-FEETが“赤橙”をカバーしてくれたことを語り、そのお礼とばかりに“RIVER”の一節をじっくりと歌い上げてゆく。TAKUMAも飛び入り参加する名場面となった。
「挨拶がわりに、雨が降ってもいいんじゃねえか、っていう曲をやろうかな」と告げ、名スタンダードのカバー“Raindrops Keep Falling On My Head”を切り出すKen Yokoyama。チャーミングなメロディがパンキッシュに展開する、粋な計らいだ。その後もアンセムを連発してゆくのだが、ベテランらしい安心感を振りまいているのかと言えば、そうではない。「YouTubeで観れるような曲でしか盛り上がれねえのかよ!!」と挑発するし、10-FEETへの敬意を表する“Let The Beat Carry On”(マイク2本をフィールドに投入。リフト男子が歌い出す)以降も「めちゃくちゃやりたくなってきた」と危なっかしさを見せつける。彼は今も、全力でパンクなヒーローなのだ。
“Viva la revolution”のサンプリングコーラスが鳴り響き、「大作戦」の盟友と呼ぶべきDragon Ashのステージが始まる。“Mix it Up”では激烈なミクスチャーサウンドの中でATSUSHI(Dancer)が京都大作戦フラッグを掲げて舞い、IKÜZÖNE(B)の思いも乗せたhide“ROCKET DIVE”カバーが痛快に駆け抜ける。Kj(Vo・G)は前回の開催中止時のエピソードを振り返り、「ミュージシャンにできることは、誠心誠意、来てくれた人の前に立つことだなって」と“ヒトリセカイ”カバーを放ち、オーディエンスに歌を預ける。「みんな泥だらけで、ニッコニコで、胸張って、素敵な1日を」と届けられる“Fantasista”は、まさに泥まみれの栄光を祝福していた。
またこの日の牛若ノ舞台では、歌詞とメロディがノーバウンドで胸元に放り込まれるFOMAREがトップを飾る。「10-FEETに真面目なかっこよさを教えてもらった」と思いを丸裸のビートロックに乗せたHump Back。“Right and Left”で強い雨をピタリと止める奇跡の光景を生み出したSurvive Said The Prophet。音圧、スピード、歌心が完璧なトライアングルを描いていたNAMBA69。激情のハーモニーを連打してエリアを揉みくちゃにしていたHAWAIIAN6。ぶっきらぼうなロックンロールの中で“その向こうへ”の一節を歌ったSIX LOUNGE。そしてこの日のトリは、地元・京都宇治が生んだ鋼鉄の英雄=THE冠である。オープニングにはNAOKIも駆けつけ、足元のぬかるみをものともしない猛者たちのヘビーメタルの時間を作り上げてしまった。
そして2日目源氏ノ舞台を締めくくるアンカー=10-FEETだが、つい今しがたまでライブを繰り広げていたはずのTHE冠こと冠徹弥が、フィールド最前列に駆けつけ、リフトされている。これは盛り上がりに拍車をかけた。一日の疲れも忘れて息を吹き返すような“VIBES BY VIBES”ではじまり、“goes on”ではバスケットボールで鞍馬ノ間を毎年盛り上げている大阪籠球会のメンバーが、華麗なボールハンドリングで魅了する。TAKUMA(Vo・G)は“太陽4号”で「心が冷めてる人は本当の感動を知っています/だからちょっとやそっとでは感動しないんだよ、へそ曲がりだからさあ !!」と奔放に思いを迸らせていた。
アーバンなポップサウンドから、急転直下に不穏なアンサンブルへと飛び込む“ハローフィクサー”の迫力も凄まじい。“ヒトリセカイ”の熱演のあとの“RIVER”では、TAKUMAに呼び込まれたKjが「今日は、こいつらに何をしてもいいと思うの」と悪戯な笑みを浮かべ、KOUICHI(Dr・Cho)とMAH(SiM/Vo)をオーディエンスのサークル中央に送り込む凶行へ。サークルが決壊する瞬間に「こーいっちゃん、MAH、さよなら♪」と言葉を残すKjが最高だ。カオスな熱狂を引きずったまま突入したアンコールでも、NOBUYA(ROTTENGRAFFTY/Vo)をステージに迎え入れ、そして無数のタオルが舞う“CHERRY BLOSSOM”と、倍返しに相応しい大団円を迎えた。本当に、ドラマティックな一日であった。ここで「京都大作戦 2019」は折り返し。7月6日(土)・7日(日)の2週目には、どんな倍返しの熱狂が待っているだろう。(小池宏和)
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