戦友・ポルカドットスティングレイと魅せた「対バン」という名の清々しい戦──「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 2 〜福岡DRUM LOGOS編〜

戦友・ポルカドットスティングレイと魅せた「対バン」という名の清々しい戦──「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 2 〜福岡DRUM LOGOS編〜 - All photo by 烈All photo by 烈

現在、2マンツアー「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」を開催中のおいしくるメロンパン。結成10周年イヤーを迎え勢いを増し続ける彼らの現在地を捉えるべく、「rockinon.com」では今ツアー全公演のレポートをしていく。Chevonを迎えたツアー初日の東京公演に続く2日目の舞台となったのは、ナカシマ(Vo・G/おいしくるメロンパン)の出身地でもある福岡のライブハウス・DRUM LOGOS。対バン相手はおいしくるメロンパンと同じく今年で結成10周年、福岡出身バンドのポルカドットスティングレイである。両バンドの対バンは8年ぶりと随分久しぶりだったようだが、ナカシマ曰く「同じ時代を生きた戦友」との共演ということで、ほとばしる火花にも温められるような、幸福な時間が流れた。その模様をレポートする。

戦友・ポルカドットスティングレイと魅せた「対バン」という名の清々しい戦──「おいしくるメロンパン 2man tour 2025 ▶PAN or RICE...?」全公演レポートPart 2 〜福岡DRUM LOGOS編〜

2月22日、福岡DRUM LOGOS。「対バンは戦(いくさ)」──そんな言葉をステージから発したのはポルカドットスティングレイの雫(Vo・G)だ。雫は他にも「(おいしくるメロンパンのメンバーを)自分たちのFCに入れる」とか「手刀で気絶させる」とか物騒なことをいっぱい言っていたが、彼女の言う「戦」が、相手を力づくで羽交い絞めにしてやろう、なんて意味ではないことは、この日のポルカドットスティングレイの清々しいパフォーマンスが証明していた。ライブの1曲目を飾った“リドー”からシャープかつ華やかな演奏で会場を彩ると、雫の「おいしくるメロンパンですっ!」という言葉に続き、なんと“シュガーサーフ”のカバーになだれ込む。ウエムラユウキ(B)のベースソロもキマりまくっている痛快かつスタイリッシュなカバーで、ライブの初っ端から、この夜が最高の夜になることを確信させる。その後も、明るさと切なさが混じり合う“さよならイエロー”、エモーショナルに疾走する“あのね、”、クールな“ゴーストダイブ”、そして艶やかに踊らせる“テレキャスター・ストライプ”と、色鮮やかに様々な表情を見せながら、会場の熱気を高めていく。トリックスターのようでありながらも赤裸々で、多面的なのに純粋で、激しいのに繊細で、軽やかなのに逞しい──そんな彼女たちの一筋縄じゃいかないストロングポイントが真っすぐに突き刺さってくる、その演奏が、雫の言う「対バンは戦」という言葉の意味を改めて実感させる。

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彼女が言う「戦」はきっと、誰かを打ち負かすために腕を振り回すことじゃない。一切の出し惜しみをせず、その瞬間、その場所に、自分が自分として全身全霊で立っていられるか、ということだ。そういう意味で、ポルカドットスティングレイのステージ上の立ち姿は、完全に戦っているバンドのそれだった。誰にも飲み込まれない。支配されない。自分が自分であるために戦うバンド。「かかってこいや、おいしくるメロンパン!」──そんなふうに叫んだラストの“ICHIDAIJI”に至るまで、ポルカドットスティングレイは見事な「戦」を見せてくれた。

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そして、続いて登場したおいしくるメロンパン。恐らく、今の彼らがすこぶるいいモードにあることはツアー1日目のレポートにも書いたが、改めて、端正なのに荒れ狂っているような、最小限なのに無限に広がっていくような、この生き物のように縦横無尽なバンドアンサンブルの凄みはなんだろうか、と思わず息を呑む。自分たちの体の使い方を熟知しているバンド。自分たちの楽曲を演奏するために独自進化を遂げた肉体。その柔軟さと屈強さは完全にオリジナルだ。例えば、ポルカドットスティングレイがカバーした“シュガーサーフ”は、本家の手によって音源よりもさらに獰猛な姿に化けている。峯岸翔雪(B)と原駿太郎(Dr)の熱狂的なソロ回しから始まり、ジェットコースターのように性急なスピードで駆け抜け、峯岸の強烈なベースソロでカタルシスの最高到達点に達し、最後には3人で向き合って締め括る──その狂おしい疾走感に体が動くと同時に、「絶景!」と叫びたくなるような壮大な景色が見えてくるようだ。また“シュガーサーフ”のような激しい側面だけではなく、例えば“look at the sea”で見せる3人のコーラスの繊細な美しさも、屈強な肉体に宿る柔らかなものを感じさせて、素晴らしい。静けさと騒々しさ、歌と沈黙、渇きと潤い──あらゆる両極が混ざり合ってひとつの世界を生み出すような“dry flower”も絶品だった。この10年で得た力強さも、高潔な弱さも、すべてを抱えておいしくるメロンパンは未来に行こうとしているのだ。

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MCでは、原の「みんなの心の備蓄米を、俺たちがふわふわに炊き上げるから、楽しんでいってくれ!」という変な煽りに続き、ナカシマがポルカドットスティングレイとの対バンへの思いを語った。同郷出身であり、同じこの10年間を生き抜いてきた彼女たちと8年ぶりに福岡で同じステージに立てることの喜びを告げた、ナカシマ。おいしくるメロンパンも、ポルカドットスティングレイも、群れたりつるんだりするイメージのない孤高のバンドとして、この10年をサバイブしてきた2組だ。そんな2組だからこそ、こんなにも真っ直ぐに、お互いをぶつけ合うように対バンができているのだろう。それぞれがそれぞれの美学を貫いて、自分たちの技術と世界を磨き続けて、「自分はここにいるぞ!」と世界に向かって存在証明をし続けた。そんなバンド同士だからこそ生み出せる、温かくて豊かな空気を感じた。

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ナカシマは「ポルカとは、同じ時代を生きた戦友だと思っています。今は10年ですけど、これから20年、30年と、共にこの荒波に飲まれた業界でしのぎを削り合い、またいつか道を交える日が来ることを願っています」と告げた。いつも一緒にいるわけじゃない。馴れ合うわけじゃない。でもお互いが本気で生きていれば、いつだって見つけ合える。そんな戦友同士の2組が生み出した最高の福岡の夜だった。ツアーの次の場所は愛知。対バン相手はネクライトーキーである。(天野史彬)

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