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 お揃いの衣裳を着て静かにステージに現れ、突然アカペラで“いろは”をスタートしたゴスペラーズの5人。「ABCDEFG……」という単語遊びを美しく歌い上げる光景は、明らかに異質な空間だった。さらに「今日は皆さん一緒に楽しんでいきましょう! もう一曲アカペラ!」と、誰もが知っているヒット曲“ひとり”をしっとりと聴かせるが、ギミックのない裸の声だけが織り成すハーモニーは、生で聴くと強烈なダイナミズムで胸に迫る。続いてバックバンドの演奏が加わり、フォーメーションを変えながらあまりに有名なあのラブソング、“ミモザ”を披露。オーディエンスもゆったりと身をゆだねている。MCでは「このカウントダウン・ジャパンには初めまして、ということで。踊ると思ってなかったでしょ? その上ね、けっこう喋るんですよ?」と軽快に笑わせながら、「ウィスキーはお好きでしょ?」という、あのCM曲のプレゼントも。さらっと歌うからこそ浮き彫りになるのは、やっぱり上手い! という今更な驚きだ。そして、初めて日本武道館に立ったときの思い出の曲であるRCサクセション“スローバラード”、ダンサブルな“1,2,3 for 5”で会場を盛り上げ、10年近く前に発表されて今なお色褪せない曲“永遠に”へ。ゴスペラーズは今年デビュー15周年目で、今日が今年最後のステージとなるのだが、「15周年の最後にこんなでっかいステージで歌えて幸せです。ありがとうございます」と、“東京スヰート”を“声”という楽器で華麗に鳴らし、ステージを去っていった。「歌うこと」を心から愛している5人が、「歌」そのものの力強さを見せつけた、そんなアクトだった。(上田智子)