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フェスの醍醐味の一つは、若いオーディエンスが、彼らのようなアーティストに出会えることだ。知ってる人には問答無用の存在。日本人が日本のことを日本語で歌い、活動する。その素晴らしきオリジネイターの一つ、頭脳警察。サングラスをつけて登場したパンタとトシは歴戦の勇士のよう。バンドはサポート4名を含む、6人編成だ。1曲目“オリオン頌歌1”の冒頭のポエトリーだけでもパンタの声の力がわかる。ポエトリーのパートが終わると、頭脳警察は、豪快にドライヴするロックで走り出した。続いては、活動初期から歌い続けている、「闘う頭脳警察」を代表するナンバー“ふざけるんじゃねえよ”。権力への怒りと、普通の若者だって共感できるフラストレーションを叫ぶこと。こんなことを彼らは70年代に歌っていたのだ。そして、共に「ふざけるんじぇねえよ!」と叫ぶことそのもののカタルシスもまたロックだ。
「久しぶりにカウントダウン・ジャパン、呼んでくれてありがとう! 素敵なおじさん、岡林信康に続いて、日本最古参のグループ頭脳警察、カッ飛ばします!」というMCに続いて放たれた、2009年のナンバー“俺たちに明日はない”のヒロイズムも、言う資格がある人が歌っているからかっこいい。続いて、「素晴らしい歌を歌う頭脳警察」を代表するナンバー“さようなら世界夫人よ”を歌う前にパンタは、バンドを結成した1969年の時代背景、17歳の時にヘルマン・ヘッセによる「さようなら世界夫人よ」の訳詩に歌をつけたあらましをきちんと説明した。また、苦笑交じりに「当時は権利関係のことなんて知らなかった」とも。“さようなら世界夫人よ”と、続く2008年作“時代はサーカスの象にのって”には共通するところがある。世界や時代を豊かな比喩で歌いながら、生を模索していくところだ。この難しい2011年に聴いて、かなりグッと来る流れの2曲だった。今の頭脳警察は、人を鼓舞する陽性のエネルギーを与えるバンドだ。(斉藤知太)