今年メジャー・デビューを果たし、一気に認知を広げたオバ犬ことOverTheDogs、COUNTDOWN JAPAN初登場である。ヴォーカル恒吉の、聴けば一発で印象に残る高音ヴォーカル、文学性豊かな歌詞の世界が、まず魅力的。いわゆるギター・バンド+鍵盤によるアンサンブルも整合感と狂気を両方感じさせてくれて面白い。メジャー・ファースト・アルバム『トケメグル』の1曲目にして、アルバム全体の世界観のプロローグとなるナンバー“イッツ・ア・スモールワールド”でゆったり、包み込むように彼らのステージは始まった。このバンドは(この日のライヴは)恒吉とメンバーの役割が明確で、プレイヤー陣は自分の持ち場からほぼ動かず、ほとんどの視線を恒吉に集めようとするかのように、優れた演奏に徹する。全身黒、ハットをかぶってドレッシーな恒吉の動きは、舞踏家のように、シアトリカルに空気を支配する。MCの間も独特で、煽るは煽るのだが、ゆっくりと自分のペースで喋る。「楽しい時も、悲しい時も、嬉しい時も、エロいことばっか考えてる時も、ラーメン食べたい時も、ラーメン食べたくない時も、好きな人がいる時も、好きな人がいない時も、ずっと歌を歌っていけたら、とても幸せだと思います。どうぞみなさんも自分の歌を歌っていってください」なんて言ってから、“うた”という曲に突入したり。そして歌声は、ライヴでも素晴らしく明確に届き、歌詞が全部聴こえる。するとどうなるかというと、見ているこちらが盛り上がる、というより、恒吉の世界観に入り込んで楽しむ、という感じになるのだ。曲の文脈も含めて、物語を見ているような感覚になる、フェスではなかなかない、鮮烈な個性を感じさせるライヴだった。(斉藤知太)
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