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暗転した舞台にSEが流れ出し、メンバーが登場すると、それだけで観客からハンドクラップが起こる。彼らがファンの温かい愛を受けていることが初っ端から伝わってくる。オープニング・ナンバーは“おいでシスター”。ダンサブル・ビートを編むリズム隊に引き攣ったようなギターが絡み出すと、このMOON STAGEに一気にオワリカラの世界が展開される。また2曲目“ドアたち”では、そんなNYパンク~ポスト・パンクに連なる流れを基盤に歌謡的なエッセンスを取り入れた彼らの濃厚な音楽の中で、キーボードの美しいフレーズが上手く清涼剤として機能していた。歪なようでいて実はそれぞれのパートが有機的に繋がったバンドである。
「COUNTDOWN JAPAN! 一緒に行きましょう、シルバーの世界へ!」というMCを経て演奏されたのは、12月7日に発売されたばかりの、オワリカラにとって初となるシングル曲“シルバーの世界”。この曲のサビで一気にまくしたてるヴォーカルの爆発力と、それまで弾いていた複雑なフレーズから一変して空間を覆いつくすように鳴らされるキーボードとが見せる、意図的に作られたであろうアンバランスが、文句なしに面白い。そしてフロアが一番の盛り上がりを見せたのは、5曲目に置かれた“swing”だった。タカハシヒョウリ(Vo/G)がユニークな声質で《思いつくかぎり罵ってやる だから僕が太ってハゲたら殺してくれ》という挑発的なリリックを歌うこの曲は、オワリカラがどれだけ「ロックとして正しくストレンジであること」に自覚的なバンドかを改めて確認させてくれる。観客もそうしたオワリカラのロックに対する批評性を受けとめるように、既成の「盛り上がり方」にとらわれずに曲とリリックの展開に合わせて自由に踊り、手を掲げている。バンドとファンが一緒になって紡いでいくロックの物語が、ここにまた新しく始まっているのである。ロック・リスナーとして、またこの物語の参加者として、オワリカラから一瞬も目を離してはならない。今日のライヴを観た人は、そんな風に思ったんじゃないだろうか。(長瀬昇)