LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS、BEAT CRUSADERSに続いて、JAPAN JAMで特別なステージを披露してくれるのは、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。まるでこのバンドの登場に合わせるかのように、ステージには西日が差し込み始める。SEに乗ってステージに6人のメンバーが登場。マーティンのフィドルに導かれるように始まった1曲目は“A Whole New Day”。初開催となるJAPAN JAMにふさわしい曲だ。軽やかなアコースティック・ギターの響きに情熱的なパーカッションが絡み、ウッドベースとドラムがアンサンブルをしっかりと支える。この編成で探求してきたトラッド・ミュージックの粋を集めたような楽曲が、ここから次々と披露されていく。16拍子のリズムに合わせて3本のアコースティック・ギターが軽快なハーモニーを生み出す“New Tale”。憂いを帯びたマーティンのフィドルの旋律とTOSHI-LOWのストレートな日本語が相互にフィードバックを引き起こす“UKIGUSA”。古きよきフォークのソングライティングをトラッド・ミュージックの風合いで現代に甦らせる“all the way”。元々、「JAM」的な要素を多分に持っているバンドだが、四方を山に囲まれた富士スピードウェイでこのバンドのライヴを体験できるのは、至福の体験と言っていい。

ここで一旦、マーティンがMC。「これからスペシャル・ゲストが出てくるんで、待っててください。すごいヴォーカリストですよ。OVERGROUNDが彼女とやることになるなんて思ってもいなかった」。しかし、その衝撃のスペシャル・ゲストの登場は、まだお預け。ここからは、ファースト・アルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』の楽曲を披露していく。最後のマーティンによるフィドルのソロが美しい情感を湛える“Memories”。トライバルなパーカッションを軸に、演奏がどんどんと熱量を上げていく“Dissonant Melody”。TOSHI-LOWの弾くバック・ビートのアコースティック・ギターから国境を越えた祭囃子へと突入していく“Squall”。そして、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND単体での最後の曲となったのは“The World”だったのだが、この曲がすごかった。広がりのあるメロディーを持つこの曲は、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDがセカンド・アルバムで違う次元に入ったことを証明する曲だが、コンパクトな曲なのに、最後はとんでもないところまで連れて行かれてしまう。

けれど、さらにとんでもないことが起こるのがJAPAN JAM。先ほどのマーティンのMCにもあったスペシャル・ゲストがいよいよ登場。「今からスペシャルゲストが出てくるんですよ。拍手でお迎えください。Cocco」というマーティンの紹介と共にステージに現れたのは、水色のワンピースに身を包んだCocco。事前に告知されていたとはいえ、この組み合わせにはあらためて驚かされる。そして、Coccoはマイクを手にするなり話し始める。
「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDと友達じゃないし、渋谷陽一がやれっていうからやったんだけど、音楽をやっていると不思議なことにこうして一緒にステージに立つことができる。ちゃんと覚えたりしてないし、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
そうして始まったOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDの“Thank you”、そして次のCoccoの“樹海の糸”は、もう途轍もない音楽的な情報量で、Coccoが客席に靴下を投げたり、いろいろあったのだけど、なんといっても印象的だったのは、歌い始めた途端、Coccoの表情がまったく変わったということ。そして、TOSHI-LOWとマーティンという二人のヴォーカリストに挟まれても、Coccoの凛とした声は圧倒的な存在感を持っていたということ。“Thank You”と“樹海の糸”の、あたたかくも、強い音楽としての響きが忘れられない。それは音楽に生を重ね合わせてきたミュージシャンだからこそできたコラボレーションだった。その戦慄の余韻はCoccoがタンバリンで参加した“Bamboo leaf boat”のジャム・セッションまで続いていた。（古川琢也）

1 A Whole New Day
2 Black and Blue Morning
3 New Tale
4 UKIGUSA
5 all the way
6 Ankaa
7 Memories
8 Dissonant Melody
9 Squall
10 The World
11 Thank you
12 樹海の糸
13 Bamboo leaf boat