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◆ZAZEN BOYS (16:45 リベルタステージ)
ゲスト・アーティスト:山下洋輔 / 坂田明

貴重で、ダイナミックで、驚くようなセッションがいくつも繰り広げられているこのJAPAN JAMだが、そのなかでも異質というか、冒険的というか、とんでもないものが出てくるのは目に見えているのだが、それがどうとんでもないのかさっぱり予想がつかない組み合わせの筆頭はこれではないだろうか。きわめてラディカルにロックの境界を越えていくロック・バンド=ZAZEN BOYSと、世界でもトップクラスのジャズ・プレイヤー、山下洋輔と坂田明が競演するのである。
ライヴの前半はZAZEN BOYS単独でのパフォーマンス。出てきていきなりビールを一口飲んだ向井秀徳は黒のスーツにハットをかぶっている。「MATSURI STUDIOからやってまいりました」といつもの前口上から"Honnoji"へ。そして続く"Himitsu Girl's Top Secret"で早くもZAZEN一流のグルーヴがリベルタステージを覆い尽くす。……ヤバいぞ、今日のZAZENは。メンバー同士のアイコンタクトによって、瞬間瞬間に姿を変えていく楽曲。考えてみれば、彼らにとっては「いつものライヴ」がすでにジャム・セッションなのだが、その切れ味、鋭さ、タイトさはいつも以上。向井のヴォーカルもいつにも増して熱がこもっている。気合が入っている。後半の巨匠たちとの「勝負」に向けて、すでにハンパじゃない気合が入っている。"Asobi"では吉兼のビッグマン・マラカスも登場、「遊び足りない」と歌う向井は笑みを浮かべている。それならば思う存分遊んでもらおう。いよいよ、ゲスト・ミュージシャンの登場だ。



坂田明が首からアルトサックスを下げて登場し、山下洋輔がピアノの前に座る。セッション・パートの1曲目は"Sugar Man"……って、何だこれ! ジャム・セッションというレベルを遥かに通り越して、ZAZENの4人と山下と坂田、合計6人で、寄ってたかって曲に貪りつき、バラバラにぶっ壊して、まったく新しいものに作り直していくような体験である。続く"Nakameguro"は向井が「往年の山下洋輔トリオに思いを馳せて作りました」という新曲。坂田のサックスが、山下の肘で弾くピアノ(出た!)が、そして松下のヤケクソのようなドラムが、空気をビリビリに引き裂いていく。ドラムとピアノのバトルが繰り広げられ、坂田がハナモゲラ語の叫びを上げる。向井が「ここは新宿三丁目」と連呼する。山下は鍵盤を痙攣するように叩きながら、口の端を上げて笑っている。いいのかこんなもん明るいうちから見せちゃって。"COLD BEAT"では向井の指揮のもとストップ・アンド・ゴーが繰り返され、吉田のベースはともかく、山下洋輔が向井の腕の動きに合わせてピアノを弾くという状況に出くわし、ラストの"Kimochi"では美しいアンサンブルとメロディが一瞬にしてズタズタに切り刻まれていくさまを目撃。いちいち目を見開いていたら、あっという間にセットが終わっていた。刺激だらけ、スリルだらけの60分。すごかった。(小川智宏)


1 Honnoji
2 Himitsu Girl's Top Secret
3 Riff Man
4 Asobi
5 Sugar Man w/ 山下洋輔、坂田明
6 Nakameguro w/ 山下洋輔、坂田明
7 COLD BEAT w/ 山下洋輔、坂田明
8 Kimochi w/ 山下洋輔、坂田明