楽しみで仕方ないんだけど、ちょっと悲しい。早く観たくて観たくて仕方ないんだけど、これ以上時間が経つのも嫌だ。フェス最終日のフィナーレを迎える前のこのあやふやな気持ち。8月8日、午後7時。おそらくこの時間にグラス・ステージに集まったすべての人間がそう感じてたんだろう。観客も、スタッフも、それこそ東京スカパラダイスオーケストラも。
そう、ロック・イン・ジャパン・フェス2004、グラス・ステージの大トリを務めるのは東京スカパラダイスオーケストラだ。去年は初日のトリを務め、カウントダウン・ジャパン03/04では正月を迎える瞬間を見事に盛り上げてくれた、日本が世界に誇る爆発エンターテイナーたちの登場である。日本最大級のお祭りを締め括るに、これほど相応しいバンドは他にいないんじゃないだろうか。超メジャー級のアクトをこれでもかというほど連発した今年のグラス最終日だが、そこに渦巻く異様な緊張感は衰えるどころか、張り詰めるばかりだった。そして、観客の期待も最高峰に達した頃、10分遅れでジャジーなオープニングSEが会場に鳴り響く。いよいよだ。淡い紫に染められたステージに設置されたウッドベースやオルガンといった楽器がその緊張感を一層に高める。
メンバーがひとりひとりステージに現われる。その姿に熱狂する3万人(もしかして、それ以上いたかも。なにしろグラス・ステージは端から端までお客さんだったから)。そして、演奏開始。“(We Know It’s) All Or Nothing”だ。軽快なビートに合わせて3万人が一斉に飛び跳ねる。一昨日のケツメイシのレポートでPA台の揺れ具合が怖いと書いたけど、今日はそれに増して揺れまくってる。怖い。けど、マジで楽しい。酒は一口にしてないというのに(一応、仕事だからね)、気分は完全に陶酔状態。え~い、もう、こっちも最後だ! この際、こっちも完全燃焼してやるぜ!
と、そのままの勢いで2曲終えて谷中のMC。「相変わらずこのフェス最高だね」。去年はイギリスのグラストンベリー、そして今年はアメリカのボナルー・ミュージック・フェスティヴァル。日本の3大フェスにもすべて当たり前のように登場している。そうやって世界中のフェスを渡り歩いてきたスカパラなだけに、めちゃくちゃ説得力があるこの一言。すんげぇ、嬉しいじゃないか。ただ、そこで残念なアナウンスが。なんと昨日、スカパラが参加した他のイベントでキーボードの沖がアキレス腱を切ってしまい、この日はバンドと一緒できなかったらしい。一瞬、落ちる観客。だが、「あいつの分まで楽しもうぜ!! 今日は完全燃焼だぁ!!」と叫び、次に演奏された“SKA ME CRAZY”でそのまま楽器を持たないままスキャンキング(スカ特有の踊り)しまくる谷中の雄姿に奮い立たされ踊り狂う。落ちるのはまだまだ早い。パーティは始まったばかりだ。 “めくれたオレンジ”をはじめ、ゲスト・ヴォーカルを招いた一連のシングルはあったとはいえ、基本的には言葉を持たないスカパラの極上ミュージック。それなのに、全編に渡るハッピーとエキサイトメントはもちろんのこと、“One Eyed Cobra”ではスリル、“Natty Parade”ではユーモア、“Look Of Love”ではその名の通りラヴ、“The Last Bandolero”ではクールネス、と曲によってさまざまな表情が展開されていく。そして、それに合わせてわれわれも、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、軽やかにステップを踏んだり、じっくり聴き込んだり、とにかく絶対に飽きることないのだ。さすが世界中を虜にしただけある。これ以上ない至福が会場全体を覆う。
親しみあるイントロが鳴り響く。“ルパンⅢ世’78”だ。3日目というのに、疲労のかけらさえまったく見せないオーディエンスの興奮にさらに火がつく。もう、完全燃焼どころか、これは明日がないと考えていいのでは? それぐらい会場全体は一心不乱にエキサイトしていた。そのままセットは“Down Beat Stomp”へ突入。本日、最大級の「ヘイヘイ」コールがグラス・ステージで沸き起こる。そして、狂乱するオーディエンスを残し、スカパラはステージを去っていった。って、え? もう? それぐらい彼等のセットは一瞬の出来事に思えた。14曲も演奏したというのに。
お願いだから「もっとやってくれ!」。そう懇願するオーディエンスの前に再び現れたスカパラ。「さいこ~う!」を何発かぶちかまし後、谷中が発したのは「フェスは一番平和に近いよね」という言葉。そう! そうなのだ! フェスは平和なのである、天国なのである。そして、ということは天国に導いてくれる救世主は、あなたたち、東京スカパラダイスオーケストラなのだ! 最後はメンバー全員で大合唱する“A Quick Drunkard”でラストを飾り、救世主たちは万遍の笑顔を残し、大歓声の中、ステージを去っていった。 フェス=平和。永遠と心に留めたいと思う。東京スカパラダイスオーケストラをはじめ出演してくれたアーティスト一同、そして最高のフェスを作り上げてくれた観客の皆様。心の底から感謝を申し上げたいと思います。ありがとう!!!!! そしてまた年末に会いましょう!!!!!(内田亮)
1. (We Know It’s)All or Nothing
2. 5days of TEQUILA
3. SKA ME CRAZY
4. 勇者の証~Brave Eagle of Apache~
5. Bridgeview
6. Soul Growl
7. One Eyed Cobra
8. Natty Parade
9. スキャラバン
10. Look Of Love
11. The Last Bandolero
12. Howlin’ Wolves
13. ルパンⅢ世’78
14. Down Beat Stomp
EN-1 A Quick Drunkard
東京スカパラダイスオーケストラ のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ