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初日、LAKE STAGEも終盤に差し掛かり、ソロとしては初出演にしてトリ前を務めるアーティストが登場。この2012年において大きな注目を集めるその人は、レミオロメンを活動休止し、一人で活動をスタートさせた藤巻亮太だ。正確には、今年2月にレミオロメンの活動休止が発表される前から、ソロ作品のリリースは報じられていた。西日の陽光と喝采を浴びながら大きく手を振って登場し、ロックなイントロの中で「ROCK IN JAPANのステージに立つのは、2007年以来です! その間、いろんなことがありました。自分がやりたいことを表現するために、ソロを始めました。今日は最後まで楽しんで行ってください!」と力強く宣言し、勢いに乗って小気味好く、自身を含めて5ピースのバンド編成で“キャッチ&ボール”を放つ。唯一無二の、芯が太く伸びやかなこの歌声は確かに藤巻亮太のものだ。当たり前かも知れないけど、強烈な存在感にはそう思わずにはいられない。玄妙なコードのカッティングから転がり出す2曲目は、どこか未来に向けられた意志を湛え、ロックンローラー・藤巻亮太のフレッシュな佇まいがひしひしと伝わってくるようだ。

「自分を殺してでもやりたいことと、好きで思うようにやりたいことと、そんなヒツジのような自分とオオカミのような自分がいてですね、皆さんの中でもそんなふうに、ヒツジとオオカミがせめぎあっているんじゃないかと思います」と告げて放たれた“オオカミ青年”は、今の彼のアーティストとしての心情が赤裸々に描き出されているナンバーではないだろうか。「自らの歌のために徹底的に練り込まれた」とでも言うべき、特大スケールで届けられるメロディとサウンド。これは圧倒的に藤巻節だ。そして、幻想的に美しい響きをもって鳴り始め、大振りで力強いロック・サウンドのアレンジへと展開する新曲。なんだろう、この、思いの一つ一つがクッキリと伝わって来る感じは。藤巻亮太は国内でもトップ・レベルのメロディメイカーであり、そして優れたシンガーである。それだけの才能を持ちながら、彼の「オオカミの部分」は黙っていなかった。なかなか凡人の想像の及ぶところではないけれど、才能は彼自身を縛り付けていたということなのだろう。この「伝わる感じ」が、今の彼の描き出したいもの、なのだろうか。とにかく、目が離せない。

ステージの後半には、8月15日にリリース予定となっている両A面シングルの2曲“月食”と“Beautiful day”が配置された。まったくタイプの異なる2曲であり、アップ・テンポなファンク・ロック・グルーヴに支えられた“Beautiful day”ではオーディエンスのスウェイが広がる。バンドのアレンジもめちゃくちゃダンサブルでかっこいい。今年の秋、『オオカミ青年』というアルバムをリリースすることも彼の口から伝えられる。そして最後に披露された楽曲に至っては、藤巻の節回しひとつにまで、開放感が滲んでいる気がする。驚くべきことに、デビュー・シングル曲の“光をあつめて”は披露されなかった。新しいキャリアを歩み出したばかりと思っていた藤巻亮太は、加速している。今後、目を離していてはいけない、そう確信させるには充分のパフォーマンスであった。(小池宏和)