LAKE STAGEの出演者は残すところ3組。満を持してステージに立つのは、難波章浩 -AKIHIRO NAMBA-だ。16時を回ったとは言え、まだまだ暑さの残るLAKE STAGE。「震災があって、茨城のみんなも大変な思いをしたと思うんだよね。去年、Hi-STANDARDとしてライヴをやったんだけど、今日は茨城のみんなに、この曲を届けに来たよ。おいでよ! よーし!」と告げ、続々とオーディエンスが詰めかけるところに放たれるのは“STAY GOLD”! いきなりやった! 《I won’t forget》の叫ぶようなシンガロングが辺りを満たす胸熱な光景だ。
続いてはソリッドなこと極まりない4ピースのバンド・サウンドで“MY WAY”を放つ。そして「うん、人が集まると、いろんなルールが出来ちゃうのはしょうがないよね。だから今日は、上に行く? ジャンプしようぜ!」と“PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT”へ。勢い良くハーモニーが溢れ出すパンク・サウンドに、フレンドリーな言葉で楽々と皆を乗せてしまう難波である。続けて昨年リリースしたシングル曲“WILD AT HEART”を轟かせると、「ちょっと話させて」と原発の話が始まる。「俺が5歳ぐらいの時からこのシステムはあってさ。だからみんなが生まれる前からあると思うんだけど。そろそろこのシステムについて、考えなきゃいけないときが来ているんじゃないかと思うんだよね。だから、俺の音楽が、ちょっとでも考えるきっかけになればいいなと思います」。難波の言葉に聴き入っていたLAKE STAGEには、熱い拍手が巻き起こっていた。「俺がやっているのはパンク・ロックで、パンクは怒りなんだ。福島の人にも怒りがあると思う。俺にもある。怒りはレベル7に達したよ!」と放たれるのは震災・原発事故後に生み出されたナンバー“LEVEL 7”である。ところが、怒りから歓喜へと一瞬のうちに方向転換してしまう機動力を持ち合わせたこのバンド、続いてはダフト・パンクの“ONE MORE TIME”のパンク・カヴァーで笑顔のダンス・タイムへと突入してゆく。
立て続けにポジティヴなメッセージを投げ掛ける“ONE STEP INTO THE FREEDOM”を繰り出すと、新ギタリストとしてバンドに加入したLyokiがこう語り出した。「俺の故郷はすごく遠くにあるんだ。北フランスなんだけど、飛行機に乗って帰るのとか大変じゃん。国と国を繋ぐ一本の道があったらいいなって話をしていて、なんでそんな話になったかというと、リハーサルでさ。この曲をやって。すごくいい曲なんだ」。ベースの機材トラブルが解決されるまでの間に、ギターを爪弾きながら「風の音も聴こうか。今日だけの風だよ」と語るLyokiはまるで詩人だ。そして歌われたのはスタンダード“TAKE ME HOME, COUNTRY ROADS”。難波ヴァージョンは日本語詞だけれど、ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミ・ギミズによる英語パンク・カヴァーもある。多くの思いを抱えて演奏された最終ナンバーは“未来へ ~It's your future”。何度でも音楽の力を借り、難波章浩はまた皆と走り始める。(小池宏和)
難波章浩 のROCK IN JAPAN FESTIVALクイックレポートアーカイブ