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《さよなら/最大級の愛が 雨に変わる》――なんて美しい歌詞だろうか、と思う。一躍その名を知らしめた“晩餐歌”もそうであったように、tuki.はこの新曲“一輪花”においても、愛と哀しみを歌っている。“一輪花”はより強く、それでいて孤独な印象がある。この曲でtuki.は《誰かのために歩いていたから/気付けなかった/私のために歩いても/構わないって気付いた》と歌い出し、《会えばきっと痛いよ 期待もしないよ》と言い放つ。愛の記憶はキリキリと痛ましく、でも温かい。その痛みも温かさも受け入れて生きる、誇り高いひとりの人間の姿が浮かび上がる。“晩餐歌”は父親に借金をしてレコーディングしたというが、その表現への飢餓感が、歌声と楽曲の強度にも繋がっているのだろう。歌わなければ、作らなければ、いられない人なのだろう。“晩餐歌”はギターだったが、“一輪花”ではピアノをフィーチャーしている。きっと多才な人なのだ。早く次の曲も聴きたい。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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