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喪失やそれによって生じる心の空白を、曲調やリリックのみならずその歌声に宿す機微や奏でる音のタッチも駆使して巧みに浮かび上がらせ、同じような傷を負った一人ひとりの心を捉え寄り添うことにかけては、当代屈指のバンドのひとつthe shes gone。島田昌典をプロデューサーに迎えたピアノやストリングスが担う割合の多いバラードソング“ひらひら”など、アレンジ面での新たな試みも随所に窺える約2年ぶりの本ミニアルバムでもその美点は遺憾無く発揮されているが、同時に「その先」を強く想起させる作品であることはタイトルの『AGAIN』という言葉にも表れている。膝をつき涙を流した先で、もう一度立ち上がること、前へ進むこと。そのことがラストの予想外な一発大逆転へと繋がる表題曲“アゲイン”はとても象徴的だ。視点をガラリと変えて自分自身を見つめながら、他に抜きん出る何かを探し作り出すことを《何も諦めていない》と歌う、“何者”のエモーショナルな独白もまた、もう一度進もうとする意志の表れだろう。(風間大洋)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年5月号より)
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