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本屋では「教養のための」という枕詞が目につき、コスパやタイパを重要視した日々を送るすべての人へ。今すぐ『帝国喫茶Ⅲ ストーリー・オブ・マイ・ライト』を聴いてほしい。それぞれの個性が融和した12曲は、すぐに正解を欲する現代社会にささやかな希望を灯していく。“つもる話し”では《じっくり考えて／ゆっくり話すこと／それこそが幸せ》と丁寧に対峙する喜びを説き、“sha na naなjourney”では《旅を続けよう あては無いほど良いでしょ?》と目的地のない旅路を面白がる。さらに“ビフォア・サンライズ”では《かけがえのない今日のために／全部を掛け違えながら》と、常に正解を選んできたわけではない人生を唯一無二と肯定してみせるのだ。一貫して温かなサウンドは、感傷的な出来事だって悲劇にさせない心意気をも感じさせる。自分の中にある空洞を埋めるのは、にわかな知識でも無駄を削り落とした生活でもない。人として失くしたくないものを抱きしめて生きていくことが大切なのだと、帝国喫茶は教えてくれる。（坂井彩花）（『ROCKIN'ON JAPAN』2025年5月号より）
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