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聴いていると耳からじゅわーっと温かさが染み渡ってゆく。TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』2クール目で急展開する物語にざわついた心が最後に帰る場所=EDテーマとして、陰翳礼讃×ミニマリズムの和洋折衷な美しさで作品に寄り添う楽曲だ。その価値観は歌詞にも表れていて、アニメ尺では流れないブリッジで綴られるのは《僕らには/最新技術はいらない》という反骨精神。そのあとすぐにシンプルなシンセと囁くようなボーカルだけの演奏で聴き手の集中力を最大限に高めてくるのだから説得力しかない。結びの《この身果てるまで 見惚れたい夢は/変わらず 僕らのデイズ》という一節は、元殺し屋である主人公・坂本太郎が守りたいファミリーという安全地帯を指していると思いながらも、そこにバニラズが歌い続けてきたポリティカルなメッセージも感じるのは深読みだろうか。不安定な情勢を生きる《渦中の人》(“平安”)である僕らが守らなければならない信念が、この曲にも貫かれているように思うのだ。(畑雄介)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より)
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