2000年ロ ンドン&イビサ 3


(6) イビサ到着。
そして、イヤな予感的中。
俺のスーツケース、出てこない。
しまいにはバゲージ・クレームのベルトコンベアがガタンと止まり、
天井の灯かりまで消され、誰もいなくなる。
しょうがないのでヨーロピアン・エアのサービスカウンターを探し当て、
そこのおねえさんに「まいすーつけーすいずなっしんぐ!」とわめき散らす。

はい、間違いです。
この場合「ロスト」か「ミッシング」を使うべきですね。
「ナッシング」では「俺スーツケースなんか持ってないもんね、
初めから」みたいな意味にとられます。
とても大卒の英語とは思えませんが、「あらそうなの。どのタイプの
スーツケースなの?」とカタログみたいなのを取り出すおねえさん。
どうやらこの手のことは日常茶飯事らしく、「ああ、そのDタイプの
コロコロひっぱるやつね。色は? ブラウンね。どこから乗ったの?
ヒースロー、でバルセロナ乗り換えね、はいはい」と
やたらてきぱきと作業を進めていく。
「ホテル教えて、届けるから」
「えっ今日届くの?」
「I hope so」
「あいほーぷそーじゃ困んだよ!
なう、うぇあいずまいすーつけーす!  ばるせろな?」
「I hope so」
「……」

ヤケんなって缶ビールをあおりつつ、迎えの車を待つ。
迎えにきてくれたユニバーサル・ミュージックの三浦さんの第一声は、
「あれ、兵庫さんえらい軽装ですねえ。旅慣れてますね」
であった。違うって。
「あ、なくなっちゃいましたか、荷物。しょっちゅうなんですよねえ。
去年は久保憲司さんのがなくなったなあ。
次の日まで出てこなかったんですよねえ」
……そうですか。

(7) ユニバーサル三浦さん、あとDJのTOMO HIRATAさんと共に
イビサですさまじく濃密な三日間をすごす。
詳しくは次号で書きますが、とりあえず一日目1軒、
二日目3軒、三日目は4軒クラブをハシゴしました。
収穫もすごくありました。で、面白かったです、とにかく。

というわけで7月1日、4軒目のクラブで朝を迎えてその足で
ホテルをチェックアウト、空港へ。
てっきり帰りもバルセロナ経由だと思っていたのだが、チケットをよく見ると
「GENEVA」と書いてある。じぇねば? あ、ジェノバか、イタリアの。
……でもそれ、すごく遠回りじゃないか? と思いながら乗った。

着いた。
スイスのジュネーヴだった。
……そうか。GENEVAって書くのね、ジュネーヴって。
それはいいんだけど、飛行機が遅れて、到着したのは乗り換えの
飛行機のフライト時間ジャスト。
慌てて空港内をつっ走るも、チェックインカウンターで
「あ、この飛行機もう行っちゃった」と言い放たれる。
がーん。

「何で遅れたの?」
「乗り換えの飛行機が1時間遅れやがったの!」
「オー」

オーじゃねえ! 今夜ロンドンで、レディオヘッドのライヴを見るのに。
間に合うのか俺。次回に続く(好評の場合)。(兵庫慎司)

(次回へ続く)