THE END、着かない。
地図を睨みながら「確かこの辺なんだけどなあ」と、おんなじところを
グルグル回ってるんだけど、生来の方向音痴が災いしているのか、
分かりづらいところにあるのか、とにかく場所がさっぱり分からない。
そこら中の通行人やお店の人にかたっぱしからきいてもみるんだけど、
まだ分からない。
何故だ。何故みんな「ああ、すぐそこだよ」って言うのに辿り着けないんだ、俺は。
「すぐそこ」の部分はかろうじて分かるものの、
それに続く説明の英語がさっぱり分からないからだ。
近いはにあ。もしくはくろーず。
うう。
1時間後、ようやく発見。
ホテルから15分もかからない距離だった。
……。
安心と情けなさのない混ぜになった気持ちで近づいて行くと、
屈強な黒人のセキュリティ2名に止められる。
「どこに行くんだ?」
「え? じ、じ・えんど」
と答えたところ、帽子から靴まで「全部服装チェック!」みたいな目線で、
本当になめるようにじいいいっと見やがるのだ。
「東洋人か……でも『ここがダメ』って言える格好はしてないな、
しょうがないか」(心の声)。
「OK、よし通れ」
……ヤな感じ。
中に入る。……寒い。3つもフロアがあるんだけど、全部合わせても
クラブエイジアのサブフロアも埋まらないくらいしか人がいない。
おいおい。日曜の夜だからか? まだ21時だからか?
でもこのパーティー、20時に始まって3時には終わっちゃうんでしょ?
この“TWICE NICE”って有名なパーティーなのに。
とりあえず一番大きなフロアで踊ってみたものの、DJと自分の
マンツーマン状態だったりして、哀しさのあまり足が止まる。
とっても所在ないので、必要以上に酒が進んでしまう。……帰ろうかな。
ただし。音はめったやたらにいい。2 STEPってがんがん踊るには
ちょっと音が柔らかすぎない? 歌物だし、ちょっとこうなんか
J-WAVEな感じじゃない? これで朝まで踊りまくれって言われても、
イギリスの人達は平気なんだろうけど日本人だとちょっとナンじゃない?
と前から思ってたんだけど、すごく音のヌケがいいし
リズムが前面に出ていて「確かに踊れるわ、これなら。気持ちいいわ」
と納得してしまう、どのフロアも。
それにしても、こんなにめいっぱい低音上がってるのに、
何で音が割れないんだろう。
気がついたら、スピーカーの前にへばりついて踊っていた。
MJ COLEの“クレイジー・ラヴ”、アートフル・ドジャーの
“ウーマン・トラブル”あたりの、僕も知っている
ヒット曲がスピンされ始める。
時計を見ると23時。あたりを見回すと、いつの間にか満員になっていた。
6割が黒人、3割が白人、あとの1割がそれ以外=東洋人とインド系
(日本人っぽい子も何人かいた)。
みんな、ばりばりにドレスアップしている。
ていうか、気合い入ってる、格好に。特に女の子と黒人の男。
MJ COLEのアルバム・ジャケットは、
ワインや時計やサングラスなんかの一流ブランド品に
「MJ COLE」というロゴがあしらわれている写真なんだけど、
ほんとにそういう感じなのだ。
今イギリスって景気いいんだなあと改めて思う。
……そろそろ「おい、それのどこが旅のトラブル話なんだ」
という感じになってきた。
そうなのだ。ここからあとの3日間は、
「翌日ソーホーで2 STEPのレコードを買い漁る」とか、
「前号でグレアム・コクソンを撮ってくれた
ロンドン在住フォトグラファー石川晶子さんと一緒に、
元ジザメリのジム・リードの新しいバンドを見に行く」とか
(ちなみにもう絵に描いたように「余生」って感じのバンドだった)、
「エセックスでマキシムの取材をやる」とか
「ノリッジに住んでいる友人夫婦がロンドンまで
出てきてくれて一緒にメシを食う」とかそういう感じで、
ないんだわ。トラブルが。
なんか思い出したりしたらまた書きます。
あ、唯一このあとのトラブルといえば、10日も留守にしていたせいで、
6日に日本へ着いたらさまざまな仕事がとんでもなく溜まっていて
泣きそうになったことと、翌7日のBUZZ NIGHTで、
オープンと共にどっさり仕入れてきた2 STEPのレコードを
次々にかけたんだけど大ハズシだったことぐらいです。はい。
もうすっかり夏ですね。3日後には苗場です。(兵庫慎司)
※以上、「ロンドン&イビサ 2000」再アップ終了です。
次回より、いつものブログに戻ります。