銀杏×「裏切りの街」 その4


さらに続きます。
今回は、「裏切りの街」の重要キャスト=
橋本を演じた、松尾スズキについて。

私、ここ12年くらい、

松尾スズキが作・演出を手がけた舞台
松尾スズキが演出した舞台
松尾スズキが俳優として出演した舞台

の、おそらくすべてを観ているけど、
掛け値なしに、今回のこの橋本が、最も、

うわ! イヤ、こいつ!

な、キャラクターだった。
これまで観た、どんな役を演じた松尾スズキよりも、人間として不愉快。
いや、オフの松尾さんも知ってるけど、そのへんも全部含めて、トップだ。
性格もイヤだし、立ち振る舞いもイヤだし、あと、見た感じもイヤ。
なんかむくっとしていて、てらてらしていて。
メイクとかのせいもあるだろうけど、それだけじゃないと思う。

ただし。終わって楽屋へ挨拶に行って、松尾さんにお会いしたら、
舞台を降りてほんの15分後なのに、既にいつもの、
シュッとした、「ああ、この人モテるなあ」っていう、素敵な松尾さんでした。
「橋本」感、ゼロだった。

役者として優れている、のは、松尾さんなんだから
もちろんだけど、プラス、きっと演出もいいんだろうなあ、とか思った。

で、同じように、田中圭も、秋山菜津子も、安藤サクラも、
芝居を観ていると、その言動に、もういちいちイライラする。腹が立つ。
「ああっ、もう!」ってなる。
ただ、前回、「全然感情移入できない」「共感できない」って書いたけど、
厳密にいうと、ちょっと違う。
なんでこいつらの行動や思考が、あんなふうな、ぐだぐだでずるずるなことに
なってしまうのかが、もう、手にとるようにわかるのだ。
つまり、共感できないのではなくて、したくないのです。
要は、あまりにもリアルだ、ということです。

7350円も払って、なんで俺は、こんな不愉快な思いをしてるんだろう。
という楽しみ方をさせる、一流のエンタテインメントだった。ほんとに。

公式サイトに三浦大輔自身が書いているコメントが、もう、
正にそのへんを、言い表していると思う。

ここです。
http://www.parco-play.com/web/play/uragiri/


あ、あと、松尾さんや秋山菜津子が優れているのは知ってたけど
(何度も観てるし)、田中圭、舞台俳優として、あんなにいいとは
思わなくて、それにもびっくりした。
この芝居で、この役だから、というのもあると思うけど、
すんごいリアル。
いる。確実にいる、こういう奴。っていうか知ってる、俺。
という、芝居でした。

この舞台、次の日曜まで東京でやってて、
そのあと大阪と福岡です。
そういう、いわば「イヤなエンタテインメント」が好きな方、
おすすめです。