新世代インディの叫びはどこへ向かうのか——ギース、最新作『ゲッティング・キルド』は9月26日リリース!


NY発のインディロックバンド、ギースが待望の3作目となる最新アルバム『ゲッティング・キルド』を9月26日にリリースすることを発表。さらに来年2月19日には初の来日公演の開催も決定した。2000年代生まれの彼らは、クラシックロックからNY伝統のアートロック的サウンドまでをベースに、現代的な怒りや空虚感、権威へのアイロニー、そして自己崩壊の美学を織り交ぜてきた。最新作は、その傾向がさらに先鋭化し、Z世代による黙示録的パンク詩として結実した1枚に仕上がっている。表題曲”Getting Killed”では、《良い人生に、俺は殺されかけている》と歌われる。幸福に見える日常の裏で進行する虚無と感情の崩壊。その告白は、この時代を生きる若者の内的終末感を鋭く映し出している。

プロデューサーは、ヴィンス・ステイプルズなどを手がけてきたヒップホップ〜エクスペリメンタルの越境者ケニー・ビーツ。LAで10日間で録音された今作は、ガラージロックにウクライナ聖歌のサンプルが重なるなど構造的には混沌としつつ、感情表現の精度は異様に高い。キャメロン・ウィンターのボーカルの表現力も相変わらずで、ジュリアン・カサブランカスの低音からトム・ヨーク的ファルセットまで、バンドの描く怒りと優しさが交差するカオスな音像に呼応するように響いている。

先行曲”Taxes”では、《税金を払わせたいなら十字架を持って来い》と歌い、国家権力や道徳への挑発を露わにするパンク精神とニヒリズムの叫びをぶつける。だがその奥には、救いを拒絶しながらも渇望する複雑な優しさも潜んでいる。音楽的には初期の骨太なクラシックロック色を後退させ、寓話的な比喩、宗教、神話、戦争、歴史、都市など崩壊寸前のモチーフをちりばめた詩世界を構築。ボブ・ディランの“廃墟の街”の迷宮とデヴィッド・リンチの夢と狂気が出会ったような異様なリアリティでどこにもたどり着けない旅が描かれる。

『ゲッティング・キルド』は、そんな現代の終末を記録したZ世代のドキュメントだ。前作のリリース後、メンバーが1人脱退。シーンの空洞化が進む今のNYで、今作は逆境を飛び越えた彼らの決定的な跳躍となるはずだ。(中村明美)



ギースの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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