ジャスティン・ビーバー、4年ぶりの帰還——これまでの苦悩を音楽で癒した新作『SWAG』をリリース

ジャスティン・ビーバー、4年ぶりの帰還——これまでの苦悩を音楽で癒した新作『SWAG』をリリース

ジャスティン・ビーバーの約4年ぶりのニューアルバム『SWAG』は、彼にとって2015年の『パーパス』に匹敵するキャリアの重要な転換点の作品になるのではないか。『パーパス』はジャスティンが脱ティーンアイドルを果たし、音楽トレンドを定義する力を持つポップスターに変貌を遂げた20代初の一作だった。対する『SWAG』はポップミュージックの流行り廃りのサイクルから距離を置き、成熟したクリエイティビティを発揮した作品で、本作と共に30代に突入した彼が公私にわたって大人になろうとしているのを感じるアルバムなのだ。

突然のリリースで世間を驚かせた『SWAG』だが、スクーター・ブラウンとの確執や借金報道、メンタルヘルスの問題、家庭内不和など、真偽様々なゴシップに苦しめられてきたジャスティンにとって、これは機が熟すのを待って作られた赦しと癒しのアルバムだと言えるだろう。それ故に『SWAG』は未だかつてないほど温もりや安らぎを感じさせるサウンドに仕上がっている。ノスタルジックでセンシュアルなR&Bはシザを連想させるが、プロデュースに彼女との仕事で知られるカーター・ラングの名前を見つけて納得。R&B以外にも、リル・Bとコラボした“DADZ LOVE”の柔らかなブレイクビーツに導かれる白昼夢のようなエレクトロニカや、渋枯れの境地のアコースティックチューン“ZUMA HOUSE”など、統一された質感の中で実は多彩なことをやっているのが本作の魅力だ。個人的にはMk.geeとやった“DAISIES”が一押し。Mk.geeのビビッドな抽象とでも呼ぶべきギターが導くそれは、マイケル・ジャクソンがソフトロックをやっているかのようだ。

歌詞を紐解けば家族や父親になったこと、妻ヘイリーへのラブソングが大半で、ラストのゴスペルがその名も“FORGIVENESS”であることからも、本作がデトックスアルバムなのは明らか。コメディアンのドルスキとの対話がセラピーとして複数回インサートされるのは流石にやりすぎにも感じるが、長らく自身の偶像との乖離を続けてきたジャスティンにとっては、今どうしても必要な自己の実体化プロセスだったのかもしれない。(粉川しの)



ジャスティン・ビーバーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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