本日9月5日にリリースされた、デヴィッド・バーンの最新アルバム『Who Is The Sky』。本作は『アメリカン・ユートピア』以来、実に7年ぶりとなる最新作。ニューウェーブ/アートパンクの旗手として約半世紀にわたり第一線を走り続けてきた彼のキャリアの集大成でありながらも、アルバムジャケットにあしらわれたサイケデリックなビジュアルが示唆するように、多幸感に満ちた色彩豊かな世界観、そして尽きることのない探究心が結晶した一枚となっている。
そんな本作のリリース前夜、ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された試聴会に足を運んだ。
受付でチケットを受け取り、指定された席に着くと、スクリーンにはアルバムカバーが大きく映し出されていた。暗闇とのコントラストのなかで、そのビジュアルはひときわ強烈なインパクトを放っていた。しかし、それ以上に印象的だったのは、劇場の反響を最大限に生かしたサウンドだ。全編を通じて鳴り響くストリングスの重厚な響きを、もはや聴覚ではなく、全身で体感することができ、作品が持つ祝祭的なコンセプトに自然と没入していった。
個人的なハイライトは、“What Is The Reason For It?”と“I Met The Buddha at a Downtown Party”の2曲。“What Is The Reason For It?”は、ラテンテイストのエネルギー溢れるサウンドに、パラモアのヘイリー・ウィリアムズとの熱いデュエットが絡む一曲。リスナーにストレートな問いを投げかけるような歌詞も相まって、アルバム全体の熱量のピークとも言える瞬間だった。
一方で、“What Is The Reason For It?”がデヴィッド・バーンのボーダーレスな交友関係から生まれたシナジーの象徴だとすれば、続く“I Met The Buddha at a Downtown Party”は、彼の独創性が際立つトラックであった。年老いたブッダが不健康なデザートの虜になっているという奇抜な設定を、コミカルかつ風刺的に描いたその視点は、本作の中でもとりわけデヴィッド・バーンらしさが感じられた。
73歳にして、今なお創作の最前線に立ち続けるデヴィッド・バーン。ロックシーンのレジェンドでありながら、遊び心を忘れず、自由な表現を追求し続ける彼の最新作『Who Is The Sky』は、その姿勢を体現した一作だ。ぜひ、耳を傾けてほしい。(北川裕也)