【インタビュー】これが誰も知らなかった本当のCreepy Nuts! 「たりないふたり」の奇跡の出会いから覚醒の名盤『LEGION』の真実、そして最新曲“Mirage”“眠れ”までを語り尽くす

【インタビュー】これが誰も知らなかった本当のCreepy Nuts! 「たりないふたり」の奇跡の出会いから覚醒の名盤『LEGION』の真実、そして最新曲“Mirage”“眠れ”までを語り尽くす
今、音楽ファンでCreepy Nutsを知らない人はまずいない。でも本人たち以外、ほとんど誰も「本当のCreepy Nuts」を知らないのではないだろうか? これは、その真の姿を解き明かしたインタビューだ。単純にラップがたまらなくやりたいという強烈な衝動に導かれながら、ヒップホップ的なバックボーンの中心にはいないと自覚していたR-指定。一方でヒップホップという音楽の懐の広さに抱かれなかった人生が想像もつかないDJ松永。それぞれに歪ながらすごい才能だが、そんな「たりないふたり」が出会ったCreepy Nutsというグループの存在はとてつもない奇跡だった。このようなグループがヒップホップの世界にも、それ以外のジャンルにもいなさすぎることによって、どこのカルチャーからも正確な位置づけがされていない。ただ、その奇跡のコンビネーションが生み出す音楽のすごさだけが人々を楽しませ、興奮させ、その拡がりは東京ドームもグローバルチャートも超えて止まるところを知らない。そんな独走状態のCreepy Nutsに食らいつくべく、ド正面から、その出会いから9月10日にCDリリースもされる最新曲“Mirage”、“眠れ”までの道のりを存分に語ってもらった。

インタビュー=古河晋 撮影=cherry chill will.


Rほど深く曲を作ることと向き合う人とは出会ったことがなかった(DJ松永)

──ふたりが出会ったのは2014年頃で、それぞれソロでもアルバムを出していたわけですけど。それぞれひとりだと何か足りないところもあって一緒にやることになったんですか?

R-指定 出会った頃に並行してソロを作っていて。最初に松永さんのトラック、音を聴いたときに、かなり俺の好きな感じやなと。どこか全体的に異国情緒漂っててクセがある、でも強度はめっちゃ高いし、変さがすごいから俺の持ってるラップの特性とめっちゃ相性いいやろなあって思ってて。ヒップホップで語られるラッパー像というのは確実にその時代その時代においてすっごい太い柱があると思うんですよね。そこと、いわゆる『らしさ』みたいなところとのせめぎ合いはずっとあって、結局「知るかよ、俺は俺だ」みたいな感じになるのを毎回繰り返している。ソロを作ったときもそれはありましたね。自分の「ぽくなさ」をどう認めさすか。それでも「間違いないな」「こいつヒップホップやな」「こいつラップエグいな」ってどう認めさせるかはずっと自分の中にあって。それで『セカンドオピニオン』っていうソロを作ったんですけど、当時の自分の年齢とか技量とかもあり、全然いい感じなんですけど内省的にもほどがあるというか。あんまヌケがないなって思っているときに、松永さんの自分が好みやなって思うトラックの、いわゆる違和感の部分に自分の違和感を足したら、めっちゃキャッチーになったんです。だから一緒に曲を作りはじめて「これで開けた気がする」っていうのはありましたね。

──松永さんは、Rさんとやって何か足りないものが手に入る感じはあった?

DJ松永 なんでしょうね? 活動全般が手に入るって感じだったのかな。まず他のラッパーと比べてもすっげえ深く一曲一曲作れてるのは、間違いなくそうですよね。他の誰かを否定するわけではないですけど、Rほど深く曲を作ることと向き合っている人とは、出会ったことがなかったかもしれない。全部が細かく意識的ですよね。当時思ったのは、他のラッパーと曲を作っているときは、ここがバースで、ここがサビでとか、わかりやすくトラックで展開をつける──倍で刻みそうなところだったらハイハット倍みたいな。今だったらベタすぎてそういうノリ方しないと思いますけど、そうやってわかりやすく展開をつけないと曲作れないよって言われることが多かった。でもRの場合は、展開をつけたら『展開をなくしてください』ってオーダーが来る。それってめっちゃ不安なわけですよ。「ワンループでいいの?」って。要は、当時の自分にとっては、より完成度を下げてラップを書いてもらうみたいな行為だったので。いちばんプレーンな部分のループを10分ぐらい作って送ったら、俺が想定外ののせ方をしてきて「こんなんでいくんだ!?」って。それでバチバチにできあがってきたあとに、そのラップに追いつくように俺が展開をつければいいんだなって。それがもの作りとして一個先に行っている感じが俺はしましたね。

R-指定 俺は逆に、展開とかサビとかのガイドを先に作られると、自分の中にみんなと同じ理論とか理屈がないから「むず」って思っちゃう。ほんとに自由帳を渡してくれたほうが、フロウもメロディも好きなデザインができる。「そうはならんやろ」みたいなところをやってることが多いんですけど、そのほうが俺はやりやすい。段取りが決まっているほうが、うまくできへん。


DJ松永 “合法的トビ方ノススメ”を作ったときは、もうちょっと4小節の中で変な展開だったんだよな。声ネタがあって、展開があって、いろいろゴチャゴチャやっていたんですけど。でも「ここの部分だけループさせてくれ」って、今の部分を引き延ばして。どうやってのっけんだろうな?って。俺、スキットみたいに考えていて。曲にするつもりはなかった。なんかトリッキーなやつを作るみたいな感じで。その一部分をループしてくれって言ったから。そしたらバースとキャッチーなフックができていて「ええええ!?」みたいな。

R-指定 松永さん的には「まあまあ、本命のやつじゃないんよ」って空気感があったんですけど、俺からしたら「これヤバいで。これ俺に渡してくれたら、めっちゃキラーチューン作れるで」って確信があって。「キャッチーやけどめちゃドープじゃない?」っていうのができた。

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ブーメランが自分に刺さるときも全然ある。あんな状態やった俺を、今の俺は救えてるかなとか(R-指定)

──以降のCreepy Nutsは、各時代のヒップホップの生々しく赤裸々なものも存分に吸収して進化しつつ、同時にヒップホップシーンではないところでもステージを上げていって、どんどんメジャーになって規模が大きくなっていく自分たちのリアルもヒップホップにしていった感じがするんです。それはどこまで自分たちでわかってやっていたんでしょうか?

DJ松永 そこはほんとに全部、結果論ですね。

R-指定 うん。正直言うと、今やから遡って喋ってるけど、当時としては、闇雲も闇雲というか。ほんまに自分の全部をさらけ出して、蛇口全開にしてっていう、自分の中で100パー剥き出しの状態で作って「いいのできた!」って。それがライブ的にもいいコンビネーションでできてるっていうだけで。同時期に『フリースタイルダンジョン』とかはじまって、ラップを聴く人が、もう一回じわじわと増えてきて。それに伴ってライブも増えて、いろんなフェスとか呼ばれて、そこでも「あーでもないこーでもない」ってやりながらメジャーになって。そうなっていくたんびに俺的には「どうしよう」って思ってましたね。ドキュメントするっていうのを自分に課したっていうのがあるから。「俺はほんとにダメな人間だ」っていうのを全部さらけ出した途端に、そうとも言えないぐらいのところにいたり。そんな悲観するようなところじゃないところにいる自分の状況になって、じゃあそれも全部言わなあかんなっていうので曲を作っていって。そんときそんとき、できるだけがっつり自分らのベストを出そうともがき続けながら、自分らのおもろいもん、好きなもんを作ってる。だからまったく計画性はないっすね。行き当たりばったりにもほどがあると思う。


──行き当たりばったりかもしれないけど、ヒップホップという音楽が自分に与えるカルマがCreepy Nutsを成長させるし。それこそ“阿婆擦れ”で歌っているようなヒップホップの厳しさというか──これ以上的確な言葉がないんだけどまさに「阿婆擦れ」感が新しい扉を開かせる。それで“のびしろ”って曲を作ったり、“オトナ”って曲を作ったり、“バレる!”って曲を書かされていく。しかも、それが人気曲になって売れていく。

DJ松永 確かに。

R-指定 俺がたまたま影響を受けたのが、ドキュメンタリーなラッパーやっただけではあるんですけど、たとえばヒップホップが一個型を見つけて、これやねんなっていう雛形みたいなのを見つけたらそこで終わりみたいな側面が強いカルチャーやったら、そうはなっていなかったですけど。ちゃんと変化も含めて吐き出していったほうがかっこよくなるっていう人たちを俺は見てきているから。変化あるごとに「こうなったらこれを言わんわけにはいかんわな」みたいに書かされている。「俺ダメなんですよ、お金も全然なくて」って言っていた奴が、ちゃんと金持ったって言わんとなって。「“助演(男優賞)”って言っていたけど、主演やな、今は」って(笑)。過去の自分ともやり合っている感じっていうのはありますね。ブーメランが自分に刺さるときも全然あるし。「あんなん言ってた俺、今こんなんなってるやん」って。そういうのの繰り返しというか。逆にあんな状態やった俺を、今の俺は救えてるかなとか。

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