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続いては、サウンドチェックの段階の音色から、かなり心地よくさせてくれたtobaccojuice。まず、ふらりと現れた4人が、暗闇のまま鳴らし始めたのは“リトルボーイがやってくる”。グルーヴィなサウンドが空気を染め上げていく中、舞うように動きながらリリックを連射していく、帽子にコート姿の松本。浮遊感があるのに、はっきりと強いメッセージが伝わる歌声を聴いていると、歌う運命を背負った人としか思えなくなる。オーディエンスも、じっと聴き入っている。しかし、こんなにゆったりした楽曲ばかりを演奏したバンドは、CDJでは他にいないんじゃないだろうか? それでいて、彼らの楽曲は、どんなに速い楽曲よりもエッジが鋭く、強いメッセージを持っている。それが、この不特定多数の人が集まるフェスという現場で届きますように、と祈りながらステージを見つめていたのだが、曲ごとに大きな拍手が、確かに巻き起こっていた。最後の“ダイヤモンド”では、ゆらゆらと体を揺らしたり、手を挙げたりするオーディエンスの姿も。「ありがとう! バイバイ」そう言って軽やかにステージを降りていった松本。音楽の魔法にとりつかれたような、至福の時間だった。(高橋美穂)