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「バンド始めてから、こういうお祭りに出たことなかったんで、戸惑ってたんですけど……楽しいです。ありがとう」と朴訥と語るのは、CDJ初登場・ tacicaの猪狩翔一(Vo・G)だ。聴く者すべての心を掴んで揺さぶって鼓舞して回るようなエネルギーとヴァイブレーションに満ちた猪狩の歌声。僕らの日常がことごとく切実で感動的なドラマであることを気づかせていくような楽曲。猪狩の歌とメロディをドライヴさせていく小西悠太(B)&坂井俊彦(Dr)のリズム・セクション……要はtacicaというバンドが、3ピース・ロックの美学の結晶のような、ソリッド&ストレートな黄金のアンサンブルを描き出しているということだ。サウンドチェックの段階から満員だったCOSMO STAGEに、曲が進むごとにさらに人が集まってくる。荒い息を落ち着かせながら「……楽しいっすか?」とフロアに呼びかける猪狩。沸き上がる歓声。「……よかった」。ステージとフロアが1つ1つ愛の言葉を囁き合っていくような、静かな熱のこもった空気でCOSMO STAGEが満たされている。30分という短い時間ながら、歌の翼を鮮やかにはためかせたtacica。ロックの新たなページが開くような期待感に満ちたアクトだった。(高橋智樹)