リハーサル時からお客さんがあまりにじっくり聴き入るもんだから、「リハーサルです!」とたびたび断りを入れていたのは、そう、ネクスト・アクト:星野源その人である。インストゥルメンタル・バンド:SAKEROCKのリーダーにして、役者(大人計画所属)としてNHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』などへ出演、さらに文筆、映像プロデュースなどマルチに活躍する才人だ。「星野源です、よろしくお願いします!」と、ギターの弾き語りでオープニングの"歌を歌うときは"を奏でれば、穏やかで、温かな時間が場内に流れ始める。続けて"キッチン"へ。軽妙なピアノの旋律、ウッド・ベースのふくよかな低音が上質の羽衣のように聴く者を包み込む。何より物語を読み聞かせるような飾らない歌声が心地よい。「あらためまして、星野源です。よろしくお願いします! どうも、どうも!」と、最初のMCタイムで語りかける星野。「すごいいっぱい入ってくれてありがとうございます。他にフェスっぽい人、いっぱいいるのにね(笑)。アレでしょ? みなさんは一人になりたくて来たんでしょ? フェスで一人になるのもオツなもんですよ。孤高な感じで。僕はSAKEROCKというバンドをずっとやっておりますが、今年ソロでデビューしまして。SAKEROCKはおじいちゃんになって東京ドームでライブやるのが夢なんですけど、みんながおじいちゃんになっても聴ける曲をと思って作りました」と披露されたのは、"老夫婦"。「♪ラララ~」というごくシンプルなコーラスが、不思議と切なく胸に迫る。続いて"茶碗"を、ユーモラスかつオーセンティックなサウンドで届け、アップ・テンポな"穴を掘る"では、オーディエンスの身体をひときわ大きくシェイク! 終盤に「最後の曲になってしまいました」と星野が語れば、「エーッ!」とフロアから即座にクレーム(?)が! 「早いっスよね? あと5分? じゃあ1曲分だね(客席から「2曲できる!」の声が)。2曲できる!? じゃあ、一人でできるヤツにした方がいいよね? リハで演ったヤツを速いバージョンでやろう!」と、即座にセット・チェンジ、"ひらめき"を披露。「やればできるね! 後で怒られたら責任とってね!」と笑いつつ、「今年はソロ・アルバムをリリースできて、本当に幸せだと思っております。今日が歌いおさめなんで、最後に思いっきり歌って帰ります!」と、締めくくりに"くせのうた" を気持ちを込めて熱唱。僕ら自身の日常の延長にある特別な時間に、たくさんのオーディエンスが酔いしれた。(奥村明裕)
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