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開演前のステージで突如、星野源(Vo&G)/伊賀航(B)/伊藤大地(Dr)/横山裕章(Key)のアンサンブルが鳴り始め、どよめきと歓声が広がるGALAXY STAGE。「まだ始まりませんよ! サウンドチェックをします。ぼんやりしてていいからね(笑)」と星野がやんわりなだめても、フロアの熱気と期待感はじわじわと増していく一方だ。4人が袖に引っ込んでほどなく舞台が暗転。改めてオン・ステージして「星野源です。イエイ!」と呼びかける頃には、GALAXY STAGEはすっかり人で埋め尽くされている。まずはギターの弾き語りで“歌を歌うときは”をじっくりと歌い上げる。静かな、しかし豊潤な歌声が、広大な空間の隅々まで広がって、心に染み渡っていく。そのまま“老夫婦”“グー”と朗らかな歌とアンサンブルが響いていく。残り少なくなった2011年を噛み締めるように、あるいは珠玉の音に触れる今の感激をそっと抱き締めるように、誰もが彼の歌に聴き入っている。
「たくさん来てくれてありがとう。すごいねー!」と、満場のオーディエンスの顔を見渡す星野。「では、新しいアルバム『エピソード』の中から……」と、まろやかな歌とポスト・ロック風のビートが絡む“湯気”へ。さらに“くせのうた”では、ピアノの凛とした響きと《同じような 記憶がある 同じような 日々を生きている》という言葉がゆっくりとマーブル模様を描きながら、GALAXY STAGEをあたたかいヴァイブで包んでいく。“布団”のジャジーなビート感の中で、星野独特の包容力とブルースが穏やかなきらめきを放ちながら、オーディエンス1人1人の胸の中にそっと寄り添っていく。
「えっとー……今年はいろいろとですね、アルバムも出して、ドラマにも出させていただいて」と2011年を総括しつつ、「来年の2月8日に、シングルを出すことになりました! 今日はその曲はまだやらないんですけど……1月4日、僕がやってる『RADIPEDIA』っていうラジオで初披露します!」と思わせぶりに2012年の展望をちらつかせる星野。そこから「その番組にトキタさんっていうミキサーさんがいて……」と、なぜか「勝手に新年カウントダウンしてから全員でトキタさんコールをする」という流れをなぁんとなく作ってしまったりする。「いろんなことがあった1年だったけど……みんなが音楽を聴いてくれることが励みになりました」と感謝の気持ちを交えながら歌った“くだらないの中に”が、よりいっそう心に沁みた。最後は星野1人だけが残ったステージで“ばかのうた”を披露――大事なものの在り処を、素朴な言葉で的確に指し示していく彼の音楽の真価が、GALAXY STAGEの大空間で存分に発揮された、この上なく幸福な時間だった。(高橋智樹)