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今年メジャー・デビューを果たし、昨年に引き続きCOUNTDOWN JAPANのステージに立った溝渕 文。圧倒的な声、圧倒的な歌唱力の持ち主だが、その実力は、1曲目、いきなりの新曲“エイプリル”でいとも簡単に証明される。ホーン隊をバックに従えた編成のなか、ジャズの奥行きとポップ・ミュージックとしての間口の広さを、彼女はこの曲で当然のように両立させてみせる。2曲目に演奏されたのは、メジャー・ファースト・アルバム『アサガタノユメ』にも収録されている“キミニアイタイ”。ワウのギター、エレピ、先述のホーン隊といったアンサンブルが妖艶な雰囲気を生む、大人のソウル・ナンバーに生まれ変わったこの曲を、彼女はまったくブレることなく見事に歌いこなしていく。「今年もCOUNTDOWN JAPAN、出演させていただいて、ありがとうございます。短い時間ですが、思いっきり歌いますので、お付き合いいただけたら嬉しいです」というMCから突入した3曲目は“雨粒”。強いメロディを持つ曲だが、その強さがこんなにも凛とした鮮やかさを持つのは、やはり彼女の声の強度ゆえだと思う。特に後半のハイトーンの伸びはすさまじい。しかし、さらに驚かされたのは、その直後に歌われた新曲2曲だった。“熱”“結晶”と題されたこの2曲は、今のポップ・ミュージック・シーンが忘れがちな、あまりにもまっとうで深遠な歌の力を、彼女の声の強度だけで成立させてしまうような説得力に満ち満ちていたのだ。30分のステージの最後を締めくくったのは“CHARGE”。これまでのジャジーで、大人な雰囲気から一転、陽気なドラム・ビートが放たれる。♪ララララという軽やかなメロディが、そのビートの上を走っていく。「溝渕 文」という不純物・添加物なしのまっさらな歌が自らを証明する、そんな清々しさに溢れていた。(古川琢也)