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THEラブ人間、仲井戸“CHABO”麗市、leccaと、出演者のカラーの振り幅が大きい今日のMOON STAGEだが、SEとしてインスト曲“-sabbat-”が響く中にMERRYの5人が現れると、またここで会場のムードが大きく変わった。一瞬で、独自にして強固な世界観を持つバンドであることが伝わってくる。MCを挟まず1曲目“不均衡キネマ”から2曲目“絶望”へと、怒涛の勢いで演奏される。“-sabbat-”も合わせ、7月27日に発売された最新作『Beautiful Freaks』の中盤をそのまま再現した流れだ。その中で彼らはエクストリームなハードコア・サウンドと、流麗でメロディックな展開とを平然と行き来する。フロントマンとして激しいステージングを行うガラ(Vo)と、異常な手数の多さながら確かなリズム・キープでバンドのグルーヴを牽引するネロ(Dr)が前後に並ぶフロントラインを生命線として、5人の息が非常に揃った演奏である(というか、息が揃わなきゃ、こんな馬鹿テクを要する曲は演奏できない!)。公式サイトのプロフィールで、彼らは自身の音楽性を指し「哀愁とヘヴィネスの融合による唯一無二の“レトロック”」と呼んでいるが、「まさに」と膝を打ちたくなるオリジナリティの際立ちっぷりだ。
ネロが「どうも初参戦のMERRYです!」とMCをする傍ら、いつのまにかガラがウサギのマスクをかぶり、拡声器を手にしている。歌われるのは、“演説~シュールレアリズム~”。ノイジーに爆裂する曲自体ももちろん格好良いが、なまめかしく踊るガラの立ち振る舞いがなんともチャーミングだ。その後もガラは裸になった上半身に墨をかぶっていたが、自分たちの世界に陶酔しすぎることで自己中毒を起こすことなく、こうしたユーモアを取り入れられるのは、間違いなく彼らの強みだろう。
ハイライトとなったのは、6曲目に演奏された“夜光”。強い歌声と、楽器隊が奏でる岩石がゴツゴツぶつかり合うような重い音像とが溶け合い、歌謡曲とハードコアとデスメタルを全部並列に混血したような異形の音楽が生まれていた。思いついたアイディアを一切ふるいにかけず、すべて曲の中に入れていった結果としての異形。しかし、この曲を含む最新アルバムではそのごった煮感はそのままに、サウンドの中央に座するメロディが、これまでになかったレベルで普遍性を宿すようになっていた。そんな彼らの進化はこのステージにもばっちり反映されていて、初め後ろの方で観ていたお客さんまでもが、ライヴが進むごとにグングン惹きつけられていったように思えた。MERRY初のCOUNTDOWN JAPAN出演、大成功と言っていいんじゃないだろうか。(長瀬昇)