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開演時刻の10分ほど前から途切れることなく人が入り続けていたMOON STAGE。観てみたいよなぁHilcrhyme、やっぱり。その「観てみたい」はもちろん、熱心なファンの「観たい」と必ずしも一致しない部分もあっただろうが、結論を先出ししてしまうと、この場にいた全員を飲み込むスケールを、今夜のHilcrhymeは見せた。まずDJ KATSUによるプレイに合わせ、6人のダンサーが次々と現れ、軽快なステップを踏み出す。MCのTOCが登場し、オープニング・ナンバー“トラヴェルマシン”を歌い始めてからも(次の“RIDERS HIGH”の間も)、このダンサーたちはリリックに上手く合わせたパフォーマンスを見せてくれた。しかし、もちろん主役は音である。“トラヴェルマシン”の音源より数倍ぶっとく強調されたベース音が否が応にも聴き手の腰を動かし、フロアが、地面が、割れんばかりの盛り上がりを見せる。ただ、このようなビートが複雑に折り重なったトラックに乗せて高度なフロウをかます曲にも、Hilcrhymeは曲中に必ずフックを設け、聴き手をひとりも置き去りにしない。その表現者としての優しさが、彼らの最大の魅力ではないかと思う。
 ダンサーが去り、「念願のCOUNTDOWN JAPANです。本当に、本当に、念願でした」という胸が熱くなるMCを挟んで始まったのは、“春夏秋冬”。フロアからざわめきが起こると共に、一斉に手が振り上げられる。言うまでもなく、サビは大合唱だ。どの観客も、この大ヒット曲に対して斜に構えることなく、素直に真正面から向き合っている。つくづく参加者に恵まれたフェスだと、改めて思う。次に演奏された“大丈夫”でも、戻ってきたダンサーと共に今日のステージを締めくくった“ルーズリーフ”でも、やはり彼らは曲に施した仕掛けや、身振り手振り、コール・アンド・レスポンスといったあらゆる手段を使って、会場全体を漏らさず巻き込もうとする。そんな彼らのキャラクターは、自分たちのファン以外の目にも触れやすいフェスの場と、とても相性が良いのではないだろうか。そんな彼らだったからこそ、今夜のHilcrhymeのステージは真冬の幕張に確かな温もりを刻むことができたのである。(長瀬昇)