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モビリタステージの一つ前のアクト、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDでも見事なコラボレーションを見せたCocco。彼女が今度は自らのステージに登場。衣装は先ほどとはガラッと変わって、鮮やかな黄色のワンピース。そして歌いだしたのは、新曲"三村エレジー"。そう、このJAPAN JAMでは各アーティストが普段とは違う趣向を凝らしたステージを展開してくれるが、今回のCoccoのステージは新曲を連発していくというもの。民謡を彷彿とさせるこの新曲を、ベースレス&2本のギター&ドラムという独自の編成で披露していく。2曲目は"強く儚い者たち"。言わずと知れた名曲だが、今日はその裸の姿を伝えるようにCoccoはありのまま歌っていく。そうした今日のモードの意味を伝えてくれたのが、次の新曲"玻璃の花"だった。曲が本質的に持っている力をそのまま引き出すように、彼女はこのストレートでエモーショナルな楽曲を歌っていく。そうして彼女も本来のステージ・パフォーマンスを取り戻していくかのように見える。前後に身体を揺らしながら、Coccoがリズムをとり始める。

メンバー紹介を挟んで、CoccoはMCでこう語った。「今日は沖縄代表のつもりで、ここにいます。どれだけ届くのか、何が叶うのか、分からないけど、歌います」。そうしてヘヴィーなギター・リフで始まった"蝶の舞う"はすごかった。歌と叫びの中間、それがとんでもない音楽的なエネルギーを放っていく。有形のものではない、無形の、だからこそ音楽でしか掴まえることのできないもの。そこに彼女は身を投げ出していく。民謡の音頭から始まる6月9日リリースのニュー・シングル"ニライカナイ"でも、そのエネルギーは変わらない。この曲では、歌と叫びに加えて、祈りさえも含みながら、ただの音楽の塊として提示する。でも、これでしか伝えられないものがあることを彼女は確信しているんじゃないだろうか。この曲でCoccoは何度も前に手を伸ばす。

セットの最後は、昨年発表された楽曲である"絹ずれ"。豪快なディストーション・ギターで幕を開けるこの曲だが、実は非常に繊細なメロディーを持った曲だ。Coccoはそれを自分の声ひとつですべてコントロールしていく。音楽的なエネルギーをまったく落とすことなく、一つ一つの襞を撫でるように、曲のエモーションを歌っていく。やろうと思って、やれるような音楽ではない。最後、メンバー全員で手を繋いで御辞儀した彼女は、倒れ込みそうになりながら、キャアと叫んでいた。(古川琢也)


1 三村エレジー
2 強く儚い者たち
3 玻璃の花
4 蝶の舞う
5 ニライカナイ
6 絹ずれ