金ラメのジャケットを振り回しながら、ヴォーカルの坂井竜二がステージに現れた時点でthe ARROWSのライヴの楽しさは約束されている。それは、下世話なほど欲望に忠実になり、理性なんてものを顧みている暇はないということである。だから、1曲目のタイトルそのままの通り、私たちは疑いようがなく“マストピープル”なのであり、2曲目のタイトル通り“ロックンロールファンファーレ”を鳴らさなければならないのだ。ちなみに、この日の“ロックンロールファンファーレ”は3人のホーンセクションを加えた豪華ヴァージョン。坂井のヴォーカルには、そのダンスも含めて独特の脂っこさがあるが、それがライヴの場では最高。一瞬にして盛り場の空気を立ち上げる魔力がこのヴォーカリストにはある。そのアクの強さが最大限に発揮された“ナイトコール”も素晴らしかったが、やっぱり白眉は本編最後に演奏された新曲“月光の街”だ。「もう一度だけ考えてみよう」「君にね、会いたいんだ」というサビを持つ内省的なバラードを最後に持ってきたところに、このバンドの誠実さと知性がある。アンコールは、大合唱アンセム“プレイボーイは憂いボーイ”。「祭り」を心の底から渇望し続けているこのバンドが、WING TENTの最後を締めくくってくれて、本当によかった。(古川琢也)
the ARROWS のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ