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サウンドチェックに登場して「これは本番でやらないのでサービスです」と突然“夏の匂い”のさわりを歌い出した小高。夏の歌なのに夏フェスでやんないのかよと思ったが、それも当然、この日のランクは「そっち」ではなく、超攻撃的かつ現在進行形なモードだったのだ。3月にリリースされたベスト・アルバム収録の新曲“ENTRANCE”にはじまり、フタを開けてみればあとは全部最新作『孵化』からの楽曲である。小高は「ついてこいよ!」と叫んでいたが、その MCが、いまの彼らの意識の方向と姿勢を象徴している。“素晴らしい世界”のパワフルなリフが、未来への扉をこじ開けるように鳴り響く。猶予はないのだ。こちらをにらみつけるような小高の眼と、腹の底から搾り出したような声。作品を生み出すごとにシリアスさを増しているこのバンドは、『孵化』を経て、まさにいま覚醒のときを迎えようとしている―。そんな、フェスという場の空気には似つかわしくない緊張感。「かかってこい!」「まだ来れんだろ」「燃え尽きろ!」観客にケンカを売るような小高の言葉は、ライヴが終わったあともピリピリとした余韻としてテントの中を漂っているようだった。(小川智宏)