メニュー




今年は2年ぶりに、スピッツがROCK IN JAPANの舞台に帰ってきてくれた。昨年、アルバム『さざなみCD』のリリースと共に結成20周年という大きな節目を迎えた彼らだが、メンバーがステージにさらりと歩いて登場して1曲目の音が鳴りはじめた瞬間、そんなことはどうでもいいと思えてしまう。少し日の傾き始めた満員のフィールドに、伸びやかに染み込んでいく草野マサムネの艶やかな歌声。気負いのなさそうな佇まいに見えて、ツアーを重ねてきたバンドのアンサンブルには、ギターも、ベースも、ドラムも、キーボードも、スキのない一体感が漲っている。「お元気ですか? 準備はいいかい?」と控えめに問いかけるマサムネのMCに観客が歓声で応えると、メンバーにも自然に笑顔が浮かぶ。これから10年後も、20年後も、きっと彼らは同じように柔らかでキラキラとしたロックを奏でているだろう。そう心から思わせてしまう何かがスピッツにはある。去り際にマサムネは、「とても素晴らしい、夏の思い出になりました。いつまでも細く長く、バンドを続けて行こうと思います」と言った。きっとまた、このひたちなかで彼らに出会える日を待とうと思う。(松村耕太朗)