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おなじみ、サポート・キーボードのクジヒロコを加えた5人のバンドが登場、草野マサムネは観客に向かって大きく手を振り、ギターを構えた。そしてカウント1発、ライヴは“放浪カモメはどこまでも”からスタート! 激しいリフとタムロールが炸裂するこの曲を駆け抜けると、「どうもー、スピッツです。今日はよろしくお願いしまーす」とリラックスした自己紹介で和ませる。続いて、ここで早くも投下されたのが大名曲“チェリー”だ。さらに続けざまに「スピッツ」+「夏」といえばこの曲をおいてほかにない“夏の魔物”が飛び出す。マサムネの透き通った声が、まるで陽炎みたいに空に高く高く上っていくような快感。と思いきや、続く“つぐみ”を歌い終えたマサムネから「スピッツはロック・バンドです!」という宣言が。何かと思ったら「でも、コール・アンド・レスポンスみたいなのないんですよね。憧れはあるんですけど」。そう言っていきなり“別れても好きな人”のサビを歌いだす。「別れてもー(別れてもー)」と奇跡(?)のC&R成立に、三輪テツヤ(G)も「みんな若くねえな!」とご満悦だ。
その後CMでもおなじみの“ビギナー”を挟んで、大沢誉志幸“そして僕は途方に暮れる”を披露。フェス恒例のカヴァー・コーナーだが、これまた完璧なスピッツ節。演奏する前に曲紹介がなかったから、知らない人が聴いたらオリジナル曲だと思ったんじゃないか。マサムネのMCによれば「高校生の頃にカヴァーした曲」なのだという。そしてここからがクライマックス。スピッツが誇るもうひとつのサマー・クラシック“渚”、「スピッツのテーマ曲」“トンガリ’95”、パンキッシュな“けもの道”とたたみかけ、ラスト“空も飛べるはず”でスピッツ2年ぶり5度目のROCK IN JAPANは終わった。とはいえ、夏の夕暮れ空にぐんぐん広がっていく歌声を聴いていると、そういう時間的な軸みたいなものはこの人たちの場合あんまり関係ないと思えてくる。彼らはいつだって飄々と、永遠を約束されたメロディを作り続けてきたからだ。演奏を終えると彼らはあっさりとステージを降りていったが、ただそれだけで「この一瞬」を特別なものにしてしまう魔法。今日のスピッツにも、確かにそれが宿っていた。やっぱ最高です。(小川智宏)