メニュー

こちらもRIJF初登場となるシンガーソングライター、さかいゆう。音符のマークがプリントされた麦わら帽子に白いジャケット、クリーム色のパンツという爽やかなスタイルで登場したさかい。中央に設置されたピアノの前に座ると、まるで指が勝手に動いてしまうかのような軽やかな手つきで鍵盤を鳴らす。1曲目は"ストーリー"だ。いきなり歌詞を《始めよう ROCK IN JAPANのストーリー》と変えて、初めてのRIJF出演への喜びを伸びやかな歌声に乗せてオーディエンスに届ける。それにしても、シルキーボイスと言われるあの滑らかな歌声からはとても想像つかない野太い声で「イエ――イ!」とか「ロック・イン・ジャパ――ン!」とか発狂していて、意外なギャップもまた魅力。さかいが激しくピアノを叩き鳴らし、満面の笑みを見せると、オーディエンスは自由に身体を揺らして思い思いに盛り上がる。

さかいの周りには2本のマイクが設置してあって、先ほどまで歌っていたマイクとは別のマイクでボイスパーカッションを披露。どうやらエフェクトのかかるマイクのようで、柔らかなコーラスを1フレーズずつ重ねていく。「まだまだ!」とオーディエンスを煽るさかい。マイクを通してお客さんの声も入っているのだろうか、何重にも折り重なったサウンドスケープがSeaside Stageを埋め尽くした。そして、「ここはひたちなかですが、渋谷で午前4時の歌を歌います」と"週末モーニン"をプレイ。かんかんに照りつける太陽の下に響く夜明けの歌は、清々しさもあるが、夜明けのメロウな雰囲気もかもし出している。

「ここで、ドイツ人のクラシック・アーティスト、バッハへのオマージュを捧げた"まなざし☆デイドリーム"!!」といって、バッハの"主よ、人の望みの喜びよ"の有名なフレーズをリズミカルにアレンジして繰り出していく。誰が煽るでもなくフロアからはハンドクラップが自然発生的に湧き起こった。9月から始まるツアーの告知をすると「渾身のラブソングです」といってラストは"train"を甘く、せつないレゲエのリズムに乗せて届ける。ここでも、また《あなたと一緒なら》を《おまえらも一緒なら》とここにいるオーディエンスに向けての最大の感謝をこめて歌い上げ、Seaside Stageはすっかりさかいゆうのポップ・マジックの虜になってしまったようだ。(阿部英理子)