前回は2005年だから、実に5年ぶりのROCK IN JAPAN FES.への登場。しかも、3日間のシメを飾る大トリ。しかもしかも、今ツアーを回っているビッグ・バンドでの登場。コーラス、ホーン、ストリングスまで含めて総勢17名。まず、GRASS STAGEエリアを埋め尽くした参加者の前へ、SEもなく、浦清英の奏でるピアノだけをバックに、YUKI登場。そのピアノと彼女の歌だけで、ライヴが始まる。曲が終わる頃、バンド全員がステージへ。ジャズでもクラシックでもカントリーでもロックでもないと同時に、そのすべてでもあるような音で(過去の曲をリアレンジして、まるで新しい曲みたいになっているのだ)、GRASS STAGEを左右に揺らし始めてから、1時間。ちょっと懐かしい曲も、最近の曲も、新しい曲も含めた、本編9曲、アンコール1曲の全10曲が終わるまでの間、なんだかもう、本当に、嘘みたいな時間だった。
ファンならご存知だと思うが、YUKIというアーティストは、ものすごいカリスマに見える時もあるけど、無力な子供みたいに見える時もある。めちゃめちゃ才気走ったアーティストのように感じられる時もあるけど、普通にそのへんにいるおねえちゃんと変わらない気がする時もある。要は、リアルだ、ってことなんだけど、今日のYUKIは、とにかく徹底的に「ものすごい」「とんでもねえ」「大爆発」方面に、ふりきれまくっていた。いや、ライヴの時のYUKIって、いつもそうかもしれないけど、それと比べても、とにかくもう、すんごいエネルギー。ヒール履いてるのが信じられない、あのステップ。レーザーを音にしたみたいに、どこまでもどこまでもとんでいくあの歌。何かのスイッチが入りっぱなしになったかのようなあの表情。なんていうんだろう、人間の、「気合い」とか「テンション」とか「エネルギー」とか「覚悟」とか、どんな言い方でもいいけど、そういうものって、時と場合によっては、本当に、とんでもないものを生み出すことがある、まるでその実証みたいなステージだった。震えました、すごすぎて。
「今日は本当にありがとうございました! こんなにすばらしい時間をみなさんと過ごすことができて、本当に幸せでした!」と言って、まるで笑顔と泣き顔を同時にしたみたいな、なんともいえない表情を見せてから、YUKIは本編最後の曲を歌った。そして、歌いながら、また、何度もそんな表情を見せた。そのあと、アンコールで、まるでジャズ・シンガーのように、シャンソン歌手のように、オペラ歌手のように、そして圧倒的に「ロック・シンガー」として歌いきって、ブレイクでこう叫んだ。
「一生懸命練習したの! どうなの!? ロック・イン・ジャパン!」
どうもこうもありません。圧巻でした。ありがとうございました。
ちなみに、2005年の時は、ステージを終えて、全力疾走でソデへ消えたYUKIですが、今日は、歩いて、最後にちょっと小走りになって、ステージを去りました。
またここで会える日を、楽しみにしています。(兵庫慎司)
YUKI のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ