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開演前からあふれんばかりのオーディエンスが集まったSEASIDE STAGE。SEに沸き起こるクラップの中、バンド・メンバーが、そしてROCK IN JAPAN初登場=高橋優が登場すると、海辺のフィールドは歓声とともに一気に熱を帯びていく。そんな高揚感を、“現実という名の怪物と戦う者たち”のアグレッシヴな歌とサウンドがさらなる高みへと導いてみせる。《どうして僕だけがこんなに辛いのかといつも思ってた》といった疎外感まみれの地点から一直線にポジティブの彼方へとかっ飛ばすような、パワフルな歌の力! さらに、力強いアコースティック・ギターのストロークとともにセクハラ先生と暴力ママへのプロテスト・ソング“こどものうた”を歌う姿からは、時代を真っ向から批評するメッセージ・シンガーとしての側面と、それをポップ・ミュージックに昇華させていくアーティストとしての側面がリアルに浮かび上がってくる。「まさに今日のためにできたと言っても過言ではない歌を歌わせていただきたいと思います」という紹介とともに披露したのは、もちろん“8月6日”。月日とともに揺れる恋心のミクロな風景を鮮やかに描ききることで、「僕らのロック・ソング」としてのダイナミズムを獲得しているこの曲が、SEASIDE STAGE満場のオーディエンスの心の奥深くに入り込んで、あたたかな感動を呼び起こしていく。「次の曲は、元気をテーマに書かせていただきました。どうにもならないこともいろいろあるけど、口角を上げて頑張っていこうじゃないかと」と歌い始めたのは“花のように”。日々の悲哀を溌剌としたメロディに乗っけて七色に輝かせていくマジカルな歌に、会場いっぱいのクラップが沸き上がって、陽の暮れかけたひたちなかの空気をひときわ明るく染め上げていく。「次で最後の曲です! 今日お集まりいただいたみなさんに、心から笑える瞬間とか『あー、今ほんと楽しいな』って思える瞬間が増えていけばいいなという想いをこめて……」というMCから流れ込んだ最後の曲は、彼の存在を広く知らしめたナンバー“福笑い”。《きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う》という晴れやかな言葉に、ありったけのエネルギーをこめていくような彼の熱唱が、強く、優しく胸に沁みた。(高橋智樹)