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恐らく今年の出演者の中でも大きな驚きをもって迎えられたバンドのひとつだろう。Plastic Tree、RIJ初見参! 開演前からギッシリと埋まったWING TENT、SEに乗ってメンバー4人が登場すると、地鳴りのような歓声が沸き起こる。そのまま“イロゴト”へ突入すると、場内に広がっていくのは、透明なアルペジオとうねるビートが折り重なる美しいアンサンブル。フロントマン・有村竜太朗(Vo&G)は、黒いシルクハットにゆったりとした白シャツ&赤いネクタイという出で立ちで、メルヘンチックな吟遊詩人みたいな雰囲気を醸し出す。鋭利なギター・リフから“メランコリック”へ突入すると、場内に吹き荒れる満場のオイ・コール! シルクハットを脱ぎ捨てた有村は熱っぽいシャウトを響かせ、先ほどまで繊細な音を紡いでいたバンドは一気にスパークしはじめる。そんなアグレッシヴな轟音と、《なぜか 涙こぼれておちた》というメランコリックな歌詞のコントラストがいい。
「やあやあ、やあやあやあ」という、Plastic Treeのライヴではお馴染みの掛け合いを見せた後は、「今日は変に気合入ってて、いつもの3割増しぐらいメイクをしてます。でも今日は暑いからライヴ終わる頃にはスッピンになってると思います」と有村。前のめりな疾走チューン“みらいいろ”を投下した後には、ステージ最前に用意されたお立ち台に上って「まだまだ遊んでくれますかー!?」と煽ることも忘れない。初出演とはいえ、デビューから14年を迎え、Plastic Treeの磐石なパフォーマンスはこの日も健在のようだ。そんなバンドに導かれ、スシ詰め状態のオーディエンスも曲を経るごとに躍動的になっていった。ラストは「(会場内にある)観覧車見ました?」(有村)というフリから、ライヴ定番チューン“リプレイ”。シューゲイズ直系のサウンドと《廻る 廻る》とリピートする歌詞により、WING TENTは宇宙の彼方へと導かれるように幻想的なフィナーレを迎えた。心の奥底に深く潜り込んでいくような密室感があり、同時に時空を軽く飛び越えていくような壮大なスケール感も備えたPlastic Treeのアクト。30分という短い時間ではあったけど、その凄みを十二分に見せつけられたような気がした。(齋藤美穂)