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昨年に引き続き、真っ昼間のWING TENTに舞い降りたのはPlastic Tree。SEに乗ってメンバーが登場すると、まず鳴らされたのは6月20日リリースの最新シングル“くちづけ”。イントロから刻まれるギター・リフの疾走感と、サビで花開くアルペジオの煌きが、はかなくも美しいサウンドスケープを描いていく。フロントマンの有村竜太朗(Vo&G)は、黒のシルクハット&えんじ色のロングコートという出で立ちで、なんとも艶やか。ロマンチックで切ないイマジネーションが音と視覚の両方から鮮烈に浮かび上がり、この1曲だけで、プラならではの幻惑的な世界へとWING TENTを連れ去ってしまった。

有村:「やあやあ」、観客:「やあやあやあ」という恒例のやり取りを経て、「次の曲“テトリス”」と有村が告げると、フロアから「わー!」という歓声が沸く。2008年発表の9thアルバム『ウツセミ』に収録されたこの曲を、こうした場でも聴けるとは。ROCK IN JAPAN FES.初出演となった去年は、最新アルバム『アンモナイト』収録曲やライヴ定番曲で攻めた彼らだが、2度目のひたちなかのステージでは、まったく異なる世界を広げようという意図か? それだけに、嬉しそうに身体を揺らすオーディエンスだけでなく、硬質なリフとビートをアグレッシヴに叩きつけるバンドも、かすれた声でシャウトする有村も、どこか楽しそうだ。そのままキラー・チューン“メランコリック”へ流れると、場内の熱気は沸点に到達! 暴風雨のような轟音が吹き荒れる中、フロアのあちこちから力強い拳が突き上がっていった。そして。ラストを飾ったのは、“アンドロメタモルフォーゼ”。じわじわと熱量を増していく壮大な音像で、WING TENTに小宇宙を出現させて終幕とした。終盤のアウトロで溢れ出るエモーションの限りを爆発させるかのように、一心不乱に楽器を鳴らしていた4人。ステージ後方から照らされる眩い逆光が、そんな4人のシルエットをドラマティックに映し出していた。(齋藤美穂)