開演前のサウンドチェックで、挨拶とばかりに“ばらの花”をフルコーラスで披露し喝采を浴びていたくるり。いよいよの本番は8/1にリリースされたばかりのシングル“everybody feels the same”を、降り注ぐ陽光の下のオーディエンスによる手拍子の中、アカペラ・コーラスで賑々しく歌い始める。「最高のロックンロールが出来ましたので、聴いて頂きたいと思います。よろしいですかー!! オン・ギター、吉田省念!!」とボルテージ高く声を上げる岸田繁(Vo・G)だ。エッジの立ったギター・リフから始まる、8ビートにもグルーヴはあるんだよ、これが8ビートのグルーヴってやつだよということを、タイトルどおりに聴く者すべてにけしかけて皆を乗せてゆく強力な一発である。そして、続けざまに放つのは“ワンダーフォーゲル”。テンポが速い! その中を伸び伸びと縫ってゆく歌声と、ファンファンによるトランペントの音色。これは気持ちいいぞ。そして、夏フェスにドンピシャリのオールド・スタイル・ロックンロール“トレイン・ロック・フェスティバル”と高速スウィングでぶっ飛んで行く新曲“chili pepper japones”が畳み掛けられるとなれば、否応無く岸田の声も熱を帯びる。なんだろうこれ。こんなにロックンロールなくるり、しかもこんなにゴキゲンな感じでかっ飛ばしているくるりを観るのは、もしかしたら初めてかも知れない。「こんにちは、くるりです」。ここで、好調ぶりを全身から迸らせるような岸田が、京訛りイントネーションの挨拶を挟み込む。「去年、メンバーが増えたんで紹介します。メンバーが減ることはあっても増えることのなかったくるりが、増えたんよ! またちょっと減ったけど、バッチリです。これでやっていきます!」と、今のメンバーでの活動の勢いを熱くアピールする。なんとニュー・アルバムが完成して、サポート・ドラマーを務めるBOBOは、そのプロデューサーでもあるそうだ。それか、このやたらにゴキゲンなパフォーマンスの根拠となっているのは。ファンファンの歌声も映える“シャツを洗えば”から“Superstar”と大らかなメロディが風に乗るナンバーが続き、そして“ブレーメン”。今のくるりの豊穣なバンド・アンサンブルで、まるで凱歌のように届けられるこの曲を聴くのも最高だ。「次、新曲やるわ」と披露されるのは、R&Bのように始まりながら予測不可能な面白い展開を持つ“crab, reactor, future”、そしてじわじわと迫るメッセージの中にひたちなかのオーディエンスに向けられたアドリブの歌詞も加えられた“glory days”といったナンバーだ。吉田省念の奏でるチェロがサウンドの表現世界を押し広げ、岸田は“everybody feels the same”“ばらの花”“ロックンロール”といった楽曲の歌詞のフレーズを次々に盛り込んで歌っていった。彼は改めてバンド・メンバーを紹介し、最後に“東京”を歌う。新メンバーで新たなアルバムを完成させた喜びに満ち、その先にある「くるりという生き方/旅路」の片鱗を見せてしまうようなパフォーマンスだった。アルバムの届けられる日が楽しみだ。(小池宏和)
くるり のROCK IN JAPAN FESTIVALクイックレポートアーカイブ