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本番が始まる前からリハーサルで、言わずと知れたアンセム“ワンダーフォーゲル”を披露してみせた、くるり。これからフェスが始まるという、こちらの気概をはぐらかされるような感もあるが、そんな“計らい”も実に彼ららしい。渋谷陽一の「毎年、変わっていくのがROCK IN JAPAN FES.。今年はGRASS STAGEに花道を作りました。渋谷陽一59歳、走ります」という挨拶の後に始まった本番のステージも、まさにそんな彼ららしいものだった。1曲目から代表曲の“東京”を披露して、広大なGRASS STAGEを沸かせたと思えば、そこからは9月にリリースの新作『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』からの楽曲を連発。すごく風通しのよい、大きなスペースを持った楽曲の“さよならアメリカ”、80sファンクをくるりの文体に昇華してみせた“コンバット・ダンス”、ソリッドなギター・リフと共に突っ走り、ギター・ソロも弾きまくりの“目玉のおやじ”、その瞬間に楽曲に初めて触れて生命を得る、まさにライヴと言えるパフォーマンスを見せてくれる。
「みんな、あの数えてみてください。150組の方たちがこのステージに出演するわけですけど、1日に何回『暑いね』って言うか。すでに僕、2回言いましたからね。僕ら、9月にアルバム出すんですけど、そこからとっておきのへヴィなナンバーをお届けするぜ」という冗談と共に始まったのは、レイドバックしたナンバー“温泉”。期待すると、ふっと交わされ、でも気付けば、くるりとしか言いようのない歌に心を奪われる。そう、やっぱりこれがくるりのライヴだ。“言葉はさんかく こころは四角”“魔法のじゅうたん”“犬とベイビー”と、どんどんその歌は素の表情を見せていく。“ロックンロール”で、その頂点を記録し、“東京レレレのレ”で祭囃子をGRASS STAGEに響かせたときには、なんの武装も必要ない、最強のくるりの姿があった。(古川琢也)