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壮絶な光景だった。「毎年、この素晴らしいステージに呼んでいただきありがとうございます。そして、こんなにたくさんの人に集まっていただきありがとうございます。悲しいことがいっぱい起こってしまった年だけど、ここから俺らが盛り上げていくから。1分1秒で世界は変わるから。最高の1日にしましょう!」……そんなACIDMAN・オオキの真摯なMCをそのまま形にしたような、怒濤のスケール感の3ピース・ロック・スペクタクルが展開されたひとときだった。 冒頭、鬼気迫る表情のイチゴの4カウントから、“world symphony”へ! 今この場所が「世界という名のカオスの真っ只中」であり「広大な宇宙の一部」であるというイメージを爆音の向こう側から真っ直ぐに突きつけるような音が、GRASS STAGEをとめどない高揚感と戦慄で包んでいく。むせ返るような熱気をさらに狂騒の彼方へと叩き込んだ“ONE DAY”。サトマのチョッパー・ベース/イチゴの16ビートが究極のダンス・ロック・パラダイスを生み出した“Final Dance Scene”……そのひとつひとつが、今この時代の決定的瞬間であるかのような衝撃に満ちている。タイトでしなやかなグルーヴ感でもってGRASS STAGEをでっかくジャンプに導いた“River”。続いて、オオキが初期の名曲“赤橙”のフレーズを奏で始めると、フィールド一面のクラップに感極まったような歓声が加わって、ビートに合わせて地面が大きく波打っていく。“FREE STAR”のタイトなビートと逞しいアンサンブルに乗せて広がる、クリスタルのようなオオキの高純度の歌とメロディ。3人のサウンドを極限まで研ぎ澄ませることで、5万人を揺さぶる強度とスケール感を獲得する……という、3ピースの究極ともいえる世界を次々に描き出していく。 「今、真っ昼間ですけど、いちばんこんな時間には相応しくない、夜の曲を歌ってもいいですか? この空に満点の星があるって想像して聴いてほしいんですね。何億、何十億という星があるなかで、この星で出会って、こうして同じライヴに集まってるのは奇跡だと思う。その先に、僕たちが生まれた理由とか、根本の部分が見えると思うんですね」……祈りにも似たオオキのMCに導かれての曲はもちろん“ALMA”。5万人の頭上に広がる大空を目映い銀河へと塗り替えるような、切実なる魂の響き。宇宙も人間も徹底的に鳴らし尽くすような意欲的なアクトの最後、轟々と吹き荒れる“ある証明”“飛光”のギター・ロック・サウンドでGRASS STAGE丸ごと震撼させて終了! ステージを去る3人に、それこそ宇宙旅行から生還した勇者を讃えるような熱い拍手喝采が送られた。(高橋智樹)