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3日間にわたるロックの祝祭空間もいよいよグランド・フィナーレ。広大なフィールド一面のクラップに迎えられてオン・ステージした大木伸夫/佐藤雅俊/浦山一悟……ここGRASS STAGEのヘッドライナーを務めるACIDMANのサウンドが、オーディエンスの情熱もエネルギーも最後の一滴まで完全燃焼させる勢いでエモーショナルに噴き上がる! どこまでも真摯に3人で鍛え上げてきた、ソリッドな衝撃波のようなロック・アンサンブルが、今この場所にいるすべての人のための祝砲のようにでっかく鳴り渡っていく。「ここに集まってくれたすべての人に感謝して……懸命に、懸命に、大トリの務めを果たさせていただきます。ACIDMANです、よろしく!」という大木の言葉からも、あふれんばかりの気迫がびりびりと伝わってくる。その志に応えて湧き起こる満場の大歓声! 魂と魂が響き合う、至高の瞬間だ。
ボサノバ・テイストと燃え盛る情熱がせめぎ合う“レガートの森”や、宇宙の歴史を丸ごと詰め込んだような“ALMA”といった最新アルバム『ALMA』からの楽曲をはじめ、超弩級サウンドが轟々と渦巻く“±0”“CARVE WITH THE SENSE”など『A beautiful greed』(09年)の曲、さらに“赤橙”(『創』)、“アイソトープ”“波、白く”“飛光”(『Loop』)といった初期ナンバーまで盛り込んだ渾身のセットリストで、この日の舞台に臨んだACIDMANの3人。3ピース・バンドのフォーマットを極限まで磨き続け、我が身を焦がすような熾烈な衝動も透徹した静寂も壮大な「表現」として結実させてきた彼ら。その進化の足跡と「今」を分かち合おうとするかのように、数万人のオーディエンスが拳を突き上げ、跳び、歌い、大地を揺らす。
「世界の仕組みを探して、世界を旅する少年の歌です」という大木の言葉に導かれて流れ込んだのは、9月19日リリースの新曲“アルケミスト”。サトマ/イチゴの穏やかなミドル・テンポのビートとともに響く晴れやかなメロディが、やがて太陽風の如き熱量をもって聴く者すべての身体と心を真っ白に照らし出していく名曲だ。「いやあ、いい景色です!」と、GRASS STAGEを埋め尽くした観客を見渡して大木が語りかける。「2003年に初めて……まだ俺たちが名前も知られてない時からここのステージに立たせてもらって。『いつかこの夜のステージに立ちたい』っていうのがみんなの夢で。その夢が叶って……この日本一のフェスに心から感謝してます。ありがとう!」。熱い拍手が広がる。
熱気あふれるフィールドに向けて、「争い合ってる場合じゃないし、土を汚してる場合じゃないし。もっともっと、真の意味で豊かな世界にできると思ってるので。そういう音楽を、これからも作っていきたいと思います」(大木)と、最後までその誠実な想いを真っ直ぐ伝えていたACIDMAN。何より、聴き手の全細胞を覚醒させるような彼らの音楽が、銀河レベルのスケールの高揚感を生み出した、あまりに感動的な時間だった。最高のロックをありがとう、ACIDMAN!(高橋智樹)