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ニューヒーロー、生誕 13:40 ACIDMAN
8/2 16:10 UP

本フェス史上屈指の熱気を生み出した氣志團、王者の風格を見せつけたTHE BOOMの後にACIDMANがグラス・ステージに立った。3日を通じて最もキャリアの浅いバンドのひとつである。しかし、現在もっとも注目を集めるバンドだけあって、グラス・ステージの熱気は下がることがない。
オープニングSE“8to1complieted”から「最高の1日にしよう!」というMCと共に一気に加速。“造花が笑う”“シンプルストーリー”という、彼らのレパートリーの中ではパンキッシュな楽曲をオープニングに据え、氣志團/THE BOOMとは全く異なるスピード感でオーディエンスを牽引する。続く、ドラム・一悟のMCは彼らの使命感のようなものを物語っていた。「ロックを出し切るから」―――。今、こんなセリフを吐けるバンドが一体どれくらいいるだろうか?
セカンド・ブロックは“バックグラウンド”“アイソトープ”“飛光”のミディアム・ナンバー3連発。3ピースの、本当に最小限の動力だけで会場を揺らしていく。テコの原理のようなグルーヴ。ハードコアパンクもテクノも当たり前のように聴き、冷静にロックを対象化した新世代バンドらしい、実に理知的なアンサンブル。どんなにビートが加速し、演奏が熱をあげても、暑苦しさのない、新素材のロック。それがACIDMANだ。
「友達がいなくて粘土をこねていたぼくが、ここまでこれたのも音楽のおかげ」という一悟のMCは感動的なのかとぼけているのか見分けがつかないわけだが、それは、まあ、いい。その後で演奏されたスロウ・ナンバー“リピート”“spaced out”はとにかく至高のでき映えだった。個人的には、このような浮遊感のある楽曲に彼らの本質があるような気がしてならない。決してクレイジーに音圧はあげない。決してクレイジーに速度をあげない。彼らほど「狂気」から距離を置いたバンドはいないかもしれない。しかし、彼らの音楽に触れるとハイになれる。宇宙について哲学的に考えれば考えるほど、その思考が詩に近づくように、世界について極めて理知的に思考をはりめぐらせることでトリップしていくバンド・ACIDMAN。「理性という快楽」を音楽に乗せる、そんな方法論で静かに会場にカタルシスを与えている。カッコいい。“リピート”では手拍子が自然に沸き起こっている。この非合法的なバンド名が、オーディエンスの記憶の深い深い場所に浸透していくのが伝わってくる。大成功だ。
ヴォーカル&ギターの大木のMCもまた逸品。「日本のロックを面白くしていきましょう」―――このバンド、デカいことをしでかすかもしれない。そんな予感を、最後のブロックで演奏された代表曲“赤橙”“アレグロ”“Your song”の3曲が確信に変えた。日本語詞で歌われる“赤橙”や“アレグロ”のメロディ音階の秀逸さを、あらためて実感した。そして、終わった。
“赤橙”に綴られた、音楽という魔法があれば地球の裏側にいける、という想像力への信頼。現在の彼らの音楽は地球の裏側どころか宇宙にまでいけるくらいのスケールを誇っていた。万単位の観衆をかっさらう、大勝利のステージと呼べるだろう。(其田尚也)
ロック・イン・ジャパン皆勤賞! 
自分らでTシャツも作っちゃいました!!

バックはこんな感じ!